ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

村上春樹氏を読んでわかった、山下達郎氏に求めていること。

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先日の『海辺のカフカ』につづいて、またしても村上春樹氏『東京奇譚集』を読んだ。
この二作、空から魚が降ってきたり、腎臓のかたちをした石が出てきたり、
不思議なストーリー展開だった。

空から魚が降るシーンは、
トム・クルーズの映画「バニラ・スカイ」(キャメロン・クロウ監督作品)でも楽しめる。
3年くらい前だと思うが、この映画をいっしょに観た人に、
「どうして空から魚が降ってくるの? ぜんぜんわからない!」
と云われて、答に窮した覚えがある。

先日、山下達郎氏『SONORITE』の「SECRET LOVER」の詩がイマイチと書いたところ、
「ラジオで竹内まりやさんが、この詩のこと褒めていたよ」と指摘してくれた人がいた。

感じ方は、人それぞれで、空から魚が降るのがわからない人もいれば、
「SECRET LOVER」の詩がいいという人もいる。人それぞれなのだ。
そこに優劣はないし、どちらが正しいというわけではない。

ただ、私はわかりました。
近年の山下氏作品の、特に詩に関する物足りなさが…。
村上氏の『海辺のカフカ』『東京奇譚集』を読んだことで。

“シュール・レアリズムの欠落”なんだと思う。

昔の山下作品の、特に吉田美奈子さんが描かれた詩は、
扉を開けるとどこか別の世界に行ったり、
ルネ・マグリットの絵のような広がりがあった。
たとえば「サーカス・タウン」。ハイウェイがタイト・ロープだったり、
街そのものを驚きやときめきに満ち満ちたサーカスとして捉えている。

あるいは「LOVE SPACE」とか「SPARKLE」には、
全編にコズミックな感覚が漲っていたというか、
映画「ベルリン天使の詩」の天使のように、
世界をちょっと高みから見下ろして、ユニークな視点で詩が描かれていた。

「SECRET LOVER」のあのメロディーに、、
たとえば吉田美奈子さん「MISTIC PARADISE」(『EXTREME BEAUTY』収録)のような
詩が乗っていたら…。
具体的な描写はないのに、現実を超えたセクシャルな霧がかかる。
現実以上にイマジネーションを喚起する表現になる。


結局ボクは、作詩・吉田美奈子、作曲・山下達郎の新曲を聴きたいだけなのかも知れない。
でも、それは、ボクだけじゃないと思う。