ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

ワインを飲むことと、「トロピカル・ダンディー」を聴くことは、似ている。

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昨日は、ワイン会だった。ブルゴーニュのワインを5種類、料理とともにいただいた。
ワイン・ブームやワイン好きの人種を、かなり長い間私は軽蔑していたが、
ある日飲んだリーズナブルなのに美味なカリフォルニア・ワインが、
私の偏見や先入観を取り払ってくれた。ちょうど煙草を止めた時期と重なり、
舌と鼻で微妙な差異を感じることが楽しくなっていくのに、さほど時間はかからなかった。

ストロベリーやラズベリーなどのベリー系の香りがしたり、
オレンジやグレープフルーツの柑橘系の匂いだったり、
枯草だったり、ヘーゼルナッツだったり、鉄だったり…。
いろんなアロマを感じるんだ。飲むアロマテラピー

舌と鼻で感じる、微妙な差異。
これ何かに似ていると思った。そうなんです。細野晴臣氏1975年『トロピカル・ダンディー』。

うん? 微かに感じるこの楽器はマリンバか?
このリズムがカリプソ…?
やっぱり大貫妙子さん&吉田美奈子さんのコーラスは最高!

などなど、自分の耳・聴覚を総動員して、微妙な音の違いを聴き分ける楽しさ。
細野さんは“音のソムリエ”なんだ。30年前から。

ヨーロッパから西インド諸島カリブ海を巡り、ニュー・オーリンズ港から上海へ、
それから琉球を経て東京へ。いろんなリズムと音楽を取り寄せて、
最後に醤油をひと降り…!
“レバニラ・ミュージック”とか“ソイ・ソース・ミュージック”と
云っていたころの(ネーミングもコンセプトもさすが!というカンジ)作品です。

このアルバムをCDで入手した1989年ごろ、
夏の海でバーベキューしながら流したら、居合わせた仲間たちに
「暑苦しい!」と云われた。
ちょっとショックだったけれど、なかなか的を得た意見だと思った。
1975年の発売当時、細野さんも周囲からさんざん「暑苦しい!」と云われたらしいから。

ひょっとしたら、今日みたいな寒い日に、
それこそホット・ワインでも飲みながら、
(夏だったらラムとかテキーラなんだけど…)
夏に想いを馳せて聴くべきアルバムなのかも知れない。