ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

教授は、活字も音楽だった。

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12月の雨の歌を3日間取り上げたところ、どうやら今日は、本当に
12月の雨の日になりそうだ。鉛色の空で、モノトーンで、ちょっと非日常な世界…。
さて、今日は、1989年に戻ります。

先日、ご紹介した『文藝別冊 大瀧詠一』は、河出書房から出版されました。
この河出書房は、坂本龍一氏のご尊父である故・坂本一亀氏が勤務されていた出版社です。
坂本一亀氏は、三島由紀夫氏『仮面の告白』等を担当された著名な編集者です。

坂本龍一氏が小学生のころ、小田実氏や高橋和巳氏がよく家に来て朝まで酒を呑んでらしたらしい。
そんな教授の半生が、モノローグとして綴られた書物が、
1989年10月に角川書店から出版されました。
タイトルは、『SELDOM ILLEGAL 時には、違法』。
もとは「月刊カドカワ」に連載されていた記事を単行本にしたものだと思います。
取材・構成は、当時「月刊カドカワ」編集長・見城徹氏(現・幻冬社社長)。
編集は、本本堂(教授の出版社、糸井重里氏によるネーミング)。

新宿ゴールデン街で呑んでいて友部正人氏と知り合い、翌日レコーディングに参加。
これがプロとして初のレコーディングだったこと。
その後、リリィのバック・バンド~スタジオ・ミュージシャン~YMOへと至ったこと。
マネジャーであるAKI氏が88年に亡くなり、かなりショックを受けたこと。
(生田朗氏…本には実名は出てきませんが、吉田美奈子さんの御主人でもあられました)
そして、ヴァージンと契約→N.Y.移住→「Beauty」発売が、
最新のトピックスとして語られています。

YMOもそうだったけれど、坂本龍一氏は、活字メディアを非常に上手に活用されている
楽家であると思います。御父様のご職業ゆえか、ご自身の出版社を一時所有されたり
“活字への愛情”を人一倍感じるアーティストです。

「音楽は聴いてくれた人が、自由に感じ解釈してくれればいい。余計な言葉は要らない」
という方もいますが、音楽を聴くのが楽しくなる、その音楽を聴きたくなる
情報なら、言葉でどんどん与えてほしいと、昔も今も私は思います。

*尚、この書物は現在は文庫化されていて、装丁・表紙は画像と異なっているそうです。