ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

雨の降った日曜日の夜は。

tinpan19732009-11-03

日曜日、大貫妙子「ピュア・アコースティック2009」Liveへ。
“最後のアコースティック・ライヴ”という言葉に惹かれたのと、
後は忙し過ぎる日常にちょっと線を引きたかったのと、
JCBホールという会場にもちょっと興味があったのと…。


“最後の〜”という意味は、弦カルテットのリーダーである
金子飛鳥さんがNYへ行かれこれまでのような活動が難しくなることもあり、
22年続いたアコースティック編成でのライブにひと区切りを付けたい
ということだそうだ。


1987年秋、サントリー・ホールでのライヴが、
現在に至るアコースティック・ライヴの原型だと思う。
溝口肇さんや清水靖晃さんが参加されていたはず。
細野晴臣さんがこのライヴをご覧になり絶賛されていたのを
昨日のことのように思い出す。


88年にはこのスタイルでアルバム『プリッシマ』を発売し、
全国をライヴ・ツアー。その後、ほぼ一年に一度のペースで
主に年末アコースティック編成のライヴは楽しめるようになった。


90年代の半ばになると、ライヴ=アコースティック編成の時代となり、
バンド編成のライヴを聴ける機会が激減そして消滅してしまった。
アコースティックが変化球だった時代は楽しめたが、
それが全てになってしまうと、私は抵抗を感じ始め、ライヴから距離を
置くようになった。


それが、どうだろう。
林立夫さんがドラムで参加するようになってからだろうか?
ともすればクラシックのようなサウンド
ビートやグルーヴや遊びが加わるように感じて、昨年久々に聴きに行った。
今回はギターの小倉博和さんも加わり、選曲にも幅が出たように思う。


ライヴは、これまでの集大成の如く、
この編成で聴きたかった曲をほとんど演奏してくれた。
「若き日の望楼」も演ってくれた。
「夏に恋する女たち」のこのアレンジ、解釈はいいと思った。
「黒のクレール」もそう思った。
「ベジタブル」のこの本物のストリングスの素晴らしさといったら…。
「新しいシャツ」も「突然の贈りもの」も、この編成では
しばらく聴き納めかと思うと感慨深いものがあった。


会場のJCBホールは初めてだった。
近くに、旧・文京公会堂、現・シビック・ホールがあるなぁ。
1973.9.21 はつぴぃえんど(はっぴいえんど)が解散コンサートを行って、
シュガー・ベイヴが大滝さんのコーラスとしてお披露目された場所…。
ライヴが終わり、そんなことを思いながら外へ出ると
雨が降っていた。気温も低い。


“雨の降った金曜日の夜は 淋しさが皆を映画へと誘うよ〜”
日曜日の夜だし、映画じゃなくライヴだけれど、そんなフレーズが口をつく。
晩秋から初冬の冷たい雨が降る夜はこの歌を口ずさむことが多い。
そう。大貫妙子「ブリーカー・ストリートの青春」。
アルバム『アヴァンチュール』(1981年)収録。
故・加藤和彦さんのアレンジ。
大貫さんがヨーロッパ路線を展開していたころ、何が楽しかったって
坂本龍一アレンジの曲と加藤和彦アレンジの曲がそれぞれ個性的で、
アルバムの中に絶妙のバランスで配分されていたこと。


今日のアコースティック編成で「ブリーカー・ストリートの青春」は
あり得ないから、帰りの電車の中でiPodで聴いた。
いつか、バンド編成のライヴで聴いてみたいな。この曲を。


あ、そう言えば、年末の坂本龍一ピアノ・ソロ・コンサートに
大貫さんがゲスト出演されるとのこと。
忙しい中、これだけは忘れないように、事前予約した。
そして当選した。今から楽しみである。


教授のピアノをバックに歌う曲。歌ってほしい曲。
この辺りは、ぜひ、ライヴを聴きに行く前に記してみたい。