ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

幸福な足し算〜One Fine Friday@STB139〜

tinpan19732009-01-17

金曜日、六本木STB139(スイートベイジル)の
吉いや大貫妙子LIVEへ。


いつものクセで吉田美奈子と書きそうになるほど、
大貫さんにとっては初のSTB139。
待ちに待ったバンド編成で、しかも1日のみの公演ということで、
チケットはあっという間にSOLD OUTだったそうだ。


せめて2日間はやってほしいと思ったが、バックを固める
敏腕ミュージシャンたちのスケジュール調整が難しく、
One Day Liveが精一杯だったようだ。


「ピーターラヴィットと私」でLiveはスタートして、
前半は21世紀に発売されたアルバムからの曲が多かった。
中盤「新しいシャツ」あたりから歴史を遡りはじめ、
続いての「都会」でグッと来た。


今日というか最近はいつもそうなのだが、
Liveに向かうまでに時間的・精神的に余裕がなく
開演に間に合うように駆けつけるのが精一杯。
「こんな曲をやってほしい」「どんな音を出すんだろう」などの
想いを抱いて本番を迎えることがほとんど無くなってきているのだが、
今日は六本木に向かう電車の中で、唯一
「六本木で聴くんだから、しかもバンド編成だから、『都会』を聴きたいな」
と思ったのだ。


♪値打ちのない華やかさに包まれ 夜明けまでつきあうというの〜
いい曲だし、いい詞だ。ましてや、林D・鈴木B・小倉G・森Kによる
極上のアンサンブル。


続いての曲。林立夫氏のドラムが、力強くあるリズムを刻む。
! これはひょっとして?
!! ギターがメロディーを奏で始めて確信する。
やった!!!「いつも通り」だ。
♪街はいつも通り きっといつも通り〜
シュガー・ベイヴの原曲に近い“いつも通り”のアレンジの
「いつも通り」だけれど、この名曲を林氏のドラムで聴ける日が来るとは…。
生きててヨカッタ。ナミダが流れた。
(林氏は軽快なフレーズを叩くときは、
 顔を外に背けプレイすることが多いと思うのだが、
 この日もまさしくそうだった)


本編最後は細野晴臣氏のトリビュート・アルバムに収録された
ファム・ファタール」を聴かせてくれた。
吉田美奈子さんも同アルバム収録の「ガラスの林檎」を
河合代介氏とのデュオ・ライヴでほぼ必ずクライマックス・シーンで
聴かせてくれるのだが、細野作品のカヴァーも
大切な自分の作品なのだと思った。これぞティン・パン・アレーの血脈。
“なんちゃってトリビュート”じゃない、作者・原曲への敬意が感じられた。


アンコール最後の曲は、NHKの番組用に作られた「懐かしい未来」。
現在進行形の楽曲で締めるあたりは大貫さんらしい。


上述の林氏のドラムはもちろん、
リトル・クリーチャーズ鈴木正人氏のベースもシュアだった。
リトル・クリーチャーズは90年ごろ“イカ天”で見たときも
タダモノではない感が漂っていたっけ。
そのメンバーが大貫さんLiveでベースを弾く。
幸福な時間の流れだと思った。


小倉博和氏のギターも、至るところでいい味を出していた。
今日いちばん感動したのはアンコールで突然「突然の贈りもの」を
歌ってくれることになって、リハーサルも楽譜の用意も無いなか
小倉氏がギターでサポートしてくれたところ。心から拍手を送った。


森俊之氏のプレイは久々だったが、貫禄が増したなという印象。
大物感とお忙しオーラが漂っていた。


これら素晴らしい音楽家たちの幸福な足し算。
バンド編成だからこそ映える曲・聴ける曲も多い。
ぜひ、定期的に聴いて行きたいものだ。