ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

風が吹くロード・ミュージック。

tinpan19732006-08-29

週後半、休みをとって関西を旅する。
和歌山に行ってみたくなった。
四十年以上生きてきて一度も行ったことがないのと、
和歌山県出身の人とも会ったことがないので、
訪れてみたくなった。


名所旧跡に行くより、
海岸線に沿って電車に乗ってみたい。
地元の人たちが生活の一部として利用する
移動空間に、乗り合わせたい。
そしてぶらり下車して町を歩きたい。


大貫妙子さんの旅の歌には名曲が多い
と思う。


シュガーベイブ時代の「蜃気楼の街」もそうだし、
名作『Romantique』の「ふたり」「果てなき旅情」など、
聴きながらロシアやスペインを旅できるし、
1992年JR東日本「その先の日本へ」CMソングだった
「美しい人よ」も、旅の魅力を巧みに表現している。


ロード・ムービーならぬロード・ミュージックの名手。
80年代中ごろ好きだった、ジム・ジャームッシュ
ヴィム・ベンダースの映画とイメージが重なる。


「Dreamland」も好きな曲だ。
1991年、MIDIから東芝EMIへの移籍第一弾シングル。
(アルバム『DRAWING』にも収録)
ANA秋のヨーロッパ・キャンペーンのCMテーマでもあったと思う。
(たしか前年1990年は山下達郎氏「飛遊人」)


「ター坊は、ハ長調になった」
「親しみやすい、いい曲だ」
私の周囲の評価は、両極端だった。たしかに大貫さんの特徴である
メロディー・ラインの不思議さは感じられないけれど、
わかりやすい・聴きやすいだけでない、聴けば聴くほど味が出るタイプの曲だと思う。


♪いつも夢を信じてた 
いつぞやのコンサートで宇宙飛行士・毛利氏の話と絡めて、
この曲を歌ってくれた。


人はなぜ旅に出るのだろう?
アフリカを、ガラパゴスを、南極を旅した大貫さんは、
奥の細道を旅した松尾芭蕉さんのように、
その意味や意義を理解しているように思う。


「蜃気楼の街」では、
虚ろな風に吹かれ流れるまま、零れ落ちた心の欠片を探しに行く。
「Dreamland」では、髪を切った日、風を近くに感じたから、旅に出る。
「美しい人よ」では、風が薫っている。


「本を読め。人と会へ。旅に出よ」。ある人から云われた言葉。
旅は人生そのものだと思う。その縮図だと思う。
さまざまな風が吹き、始まりと終わりを感じられる。


終わりがあるから、旅に出るんじゃないかな。人間は。
人生は一度しかないけれど、旅は何度もできる。
いろんな終わりを味わうことができるから。