ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

三十年間の晩夏三昧。

tinpan19732006-08-26

八月が過ぎるのが、怖かった。
夏休みが終わるのが、悲しかった。
暑さが去っていくのが、切なかった。


今日は、30年前と25年前と15年前の、
夏の終わりの話。


1976年、中学1年の今ごろ。
NHKテレビで月〜金曜・夜9時40分から10時まで
銀河テレビ小説」というドラマを放送していた。
この年の夏の終わりは、10回か20回のシリーズで
「幻のぶどう園」というタイトルのドラマだった。
山梨が舞台で、ぶどう農家に押し寄せる時代の波
というようなテーマ。尾藤イサオさんが出演されていたと思う。
ドラマも切なくていいと思ったが、主題歌が素晴らしかった。


荒井由実「晩夏(ひとりの季節)」。
♪往く夏に 名残る暑さは 
 夕焼けを 吸って燃え立つ葉鶏頭
 秋風の 心細さは 秋桜
この詩、このメロディー、このコード、このアレンジ…。
当時22歳にしてこんな渋い楽曲を作ってしまうのだ。


コンサートで秋田県横手市を訪れた際、
丘の上にあったホールから見た情景が印象に残って、
この曲のモチーフになったとご本人が話されていたのを
ラジオで聞いた覚えがある。

♪丘の上 銀河の降りるグラウンドに
 子供の声は 犬の名を繰り返し

この部分などは、その情景が直接的に昇華されたフレーズだと思う。
みちのく、どことなく宮澤賢治の世界も感じる。


1981年、高校3年生の今ごろ。
TBSテレビで軽井沢音楽祭・松任谷由実コンサートなる
番組が放送された。その中でオーケストラをバックに
(指揮はたしか山本直純氏だった)、ユーミンがこの曲を歌った。
渋くて切ない夏の終わりの曲。
「あっ、あのドラマの曲だ」とすぐにピ〜ンと来た。
次の日あたりにレンタル・レコードで『14番目の月』を借りた気がする。


1991年、社会人になっていた今ごろ。
友人たちと、山梨にぶどう狩りに行った。
甲府盆地が見渡せるところでバーベキューをしてワインを飲んだ。
あのドラマのことを思い出した。
クルマの中で、カー・ステレオから「晩夏」を流した。
この年以来、夏の終わりにこの曲を必ず聴いている気がする。


♪空色は水色に 茜は紅に
♪藍色は群青に 薄暮は紫に


夏から秋へ、移りゆく季節の様子を、変りゆく風景の色彩で
表現している。美大卒のユーミンならではのクリエイティブか。
この年11月の正隆氏とのご結婚を控え、発売された独身時代
最後のアルバム『14番目の月』の最後の曲として収録されている。