ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

桃花林を歩きながら。

tinpan19732011-04-18

日曜日、桃の花を見に、山梨方面へ。
今週あたり見ごろだろうと思い、中央道を走る。

勝沼を過ぎると、ピンクのカーペットを敷きつめたような
風景が目の前に広がる。
よかった! ちょうどいいタイミングだ!
同行者は、清里に別宅があり十年以上、月に何度か
中央道を走っているらしいが、ピンクに染まる甲府盆地を見るのは
初めてだそうだ。


僕は…、いつ以来だろう?
あれは、たしか…。
クルマの中で、山下達郎さんのラジオ番組を聴いた記憶があって、
ちょうどその頃シュガー・ベイブ『SONGS』がボーナス・トラック付で
再発されて、ゴールデンウィーク中野サンプラザ
山下達郎SINGS SUGAR BABE”コンサートがあることを知り、
ゼッタイ聴きに行かねば…と思った覚えがあるから…。
1994年だ。1994年の4月以来だから17年ぶりか。


あの頃クルマの中カセットで聴いていた音楽は、
2011年の今iPodになった。
現金で支払っていた高速料金は、ETCカードになった。
あの時、関西・淡路地震もまだ起きてなかったけれど、
今年僕たちは東日本地震を経験した。


地震。いろいろなことを考えさせられた。
なかなか頭の中の整理は付かない。
この一ヶ月、このBlogに何か書いたり、
Twitterに何かつぶやいたりする気が起こらなかった。
このまま沈黙を続けても世の中には何の影響もなく、
省エネや節電という意味ではむしろプラスとも思ったけれど、
それはちょっと後ろ向きだと思った。
沈黙が続いたのを心配してくれた人もいた。


無常観のようなものは重んじ学んでいきたいが、
虚無感に苛まれるのはイヤだ。これからも自分で考え感じたことを、
自分のペースで綴っていこう。そうすることで自分と、
自分の接する小さな世界が少しでも変化したら嬉しいと思おう。


地震後、さまざまな人がさまざまな場で、
自らの考えを発信していた。賛同を感じたり抵抗を覚えたりした。
いずれ機会があれば、この辺りについて綴っていきたい。
シュガー・ベイブということでいえば、
NHKテレビ『SONGS』で山下達郎さんが寄せたコメントは、
的確で抜かりが無くて心がこもっていて、素晴らしいと思った。
大貫妙子さんの公式Blogは地震後更新頻度が逆に増し
大貫さんの歌詞と同じように言葉数は少ないながらも、
鋭いことを述べられていてサスガ!と思った。学習になる。


僕はとにかく、考えることを続けよう。
自分の目の前のことにきちんと向き合いながら、
自分にできること、自分にしかできないことを考え行動していこう。


最後に、この度の出来事で、
大きな悲しみを負われた方へ、心からお見舞いを申し上げます。
復興に向けて大きな力を注がれている方へ、心から感謝申し上げます。

心地良い違和感。

tinpan19732011-02-24

武部聡志×吉田美奈子
興味深い共演が実現。


昨年10月、平安神宮のイベントで出会ったのがきっかけらしい。
その後12月25日美奈子さん恒例の鎌倉・歐林洞ギャラリーサロンでの
クリスマス・コンサートでお二方のデュオが実現。
「行きたい」と思っていたがチケット発売日の12時ごろ
Webをのぞくと早くもSOLD OUT。


次の機会を待ち、ようやく2月20日
上野の東京文化会館で聴くことができた。


東京文化会館小ホールは、たしか松本隆×千住明新作オペラ「隅田川」以来。
とにかく音の響きがいいホールという印象。


まず武部さんが登場し、オリジナルのインスト曲を披露。
つづいて美奈子さん登場。武部さんのR&Bっぽいゴスペルっぽいイントロが
流れる。曲は?「Liberty」だった。
うれしい。今日は、初めて吉田美奈子を聴く人といっしょだ。
今日のライヴの内容からして、ビギナーに優しい選曲では?と思い
誘ったのだが、つかみはバッチリ!

「時よ」もやってくれた。中澤信栄さんのコーラス有りで。
一昨年のブルース・アレイで一度共演されたとき、
いいハーモニーを聴かせてくれたのでこの日も楽しみだった。


露崎春女さんとのデュオでは、予想通り
「(You make me feel like a)Natural Woman」。
NHK『SONGS』の前身の音楽番組で共演され、
キャロル・キングのこの名曲を圧倒的にカヴァーして、
今日もやってくれると思っていた。
キモチ良かった。


天井高いホールのせいか「CORONA」「Footsteps」という
宇宙モノも聴けてうれしかった。
圧巻だったのは、アンコール一曲目「星の海」。
マイクを外し、武部さんの生ピアノと美奈子さんの生ヴォーカルのみ。
心が震えた。イイものを聴かせてもらった。


武部さんのピアノと美名子さんのピアノ。
全体の印象として、私は違和感を覚える。
しかし、その違和感は不快なものでなく心地良いもの。
フシギな化学反応が起きていると思う。


私にとって武部さんのピアノはやっぱりユーミンの音に聞こえる。
ユーミンの1980年「ブラウンズ・ホテル」ツアーに初参加し、
1983年「Reincarnation」ツアーからは全ツアー参加されている(はず)。


ユーミンサウンドに美奈子さんのヴォーカル。
ある種1973〜76年ごろっぽい。
ユーミンのカヴァーなんてのも聴けたら面白いと思ったりした。


武部聡志×吉田美奈子
頻繁は難しいだろうけれど、これからも
稀には実現するコラボレーションのような気がする。


また聴きたい。この違和感をもっと明確な言葉にできる日まで。
それから、中澤信栄さん、露崎春女さんのような
きちんと歌える人とのコラボレーションも続けていってほしい。

大寒から立春をともに過ごした曲。

tinpan19732011-02-12

この一ヶ月、僕のiPodで最も頻繁にプレイされたのは、
次の3曲だと思う。

教授の韓国公演パブリック・ヴューイングで感動して、
iTunesamazonで購入した曲である。


まずは「ハッピーエンド」。


韓国公演の音源をまるごとiTunesで購入して、
アルバム『/05』はamazonで購入して、
でも、これ、確かオリジナルはYMO『BGM』だよなと思い、
『BGM』…。21世紀になってソニー・ミュージック・ハウスから
YMO紙ジャケ盤が発売になったとき、買ったような買わなかったような…。
確かアルバム3枚買うと、特典だったOmiyage本が貰えて、
1stアルバムと2ndアルバムを買って、もう一枚が『BGM』を買ったのか?
『パプリック・プレッシャー』を買ったのか? 記憶が飛んでいる。
CD棚でちょっと探してみたがこの紙ジャケ盤が一枚も見つからない!


そんな矢先iTunesYMO音源が発売になったとのニュース。
これ幸いにと『BGM』を購入して、「ハッピーエンド」を聴いてみた。
スゴイ! 『BGM』と『/05』では全く別の曲に聴こえる。
しかし、このメロディー…、クセになる。


ちょっとロシア民謡っぽいというか…、
トルコから中央アジアウラル山脈を感じる旋律なのですが、私にとって…。
「Zero Landmine」にも同じような印象があります。
ロシア、トルコ、中央アジア…。どうなんでしょう?
subterraneanさんに今度聞いてみよう。


つづいて「Undercooled」。


韓国公演でのMC Sniperとの競演が鮮烈だった。
オリジナルを聴いてみたくなって、アルバム『CHASM』を
amazonで購入した。この『CHASM』の時期が、
僕が教授から最も離れた時期かも知れない。


千のナイフ」「東風」の時代からお馴染みの、
オリエンタルなメロディーに乗るハングル語(ですよね?)のラップ。
さすが!と思わせる足し算。


3曲目は「Shining Boy & Little Randy」。


この曲は、韓国公演とは無縁だけれど、アルバム『/05』を電車の中で
通して聴いていて、この麗しい楽曲に夢中になった。
アルバム『Beauty』のテーマ・コンセプトを体現したような楽曲だと思った。
これからOn-The-Goで聴きまくるために、曲名をチェックしておこうと
リストに戻る。


「Shining Day & Little Rain」と読み間違えた。
(視力低下? イヤ液晶画面がそろそろ寿命なのだ!)
ウ〜ン! タイトルも素晴らしい。
晴れ渡っっているに、ほんの少しパラつく雨。
その麗しさを表現しているんだ!
などと、誤解が脳内で増殖していく。
今、この文を書くために、アルバム『/05』で楽曲名を確認して
初めて間違いに気づいた。恥ずかしい!
(でも「Shining Day & Little Rain」のほうがイイと思いません?)


以上、ここ一ヶ月ぐらいの、私のリスニング・ライフ。

僕の今の”vs”。

tinpan19732011-01-27

今週あるセミナーで、エコデザイン宣言で有名な
東京大学名誉教授・山本良一氏の話を聞く機会があった。


宇宙には大構造があって、46億年の地球の歴史、38億年の生命の歴史、
5回の人類激減期があって、幸運に幸運が重なって現在の私たちがいる。
今、1日に400種類の生命が絶滅している。
天台宗道元、中国人の思考様式・天人合一、西洋の神学、宗教と科学…。
残された時間は少ない。亜硫酸ガスを成層圏に注入する。
ビル・ゲイツの研究所…。
さまざまな興味深い話が聞けた。
(自分のメモのために箇条書きします)


持続可能な未来をつくるために、私たちは何をしなければならないか。
残された時間は少ない。
要約すると、こんなテーマのお話だった。


一方で、糸井重里氏がTwitterで絶賛されていた本
『繁栄〜明日を切り拓くための人類10万年史』(マット・リドレー著)
を読んでいる。
原題は『The Rational Optimist』、
“合理的な楽観主義”とでも略すべきか。


「経済崩壊、貧困拡大、環境汚染、人口爆発……。
 メディアを席捲する知識人は、われわれ人類は今にも破滅に向かうと
 日々嘆く。 だが実のところ、こうした悲観的未来予測は
 200年前から常にあったのだ――ほとんど外れてきたにもかかわらず。
 各種データを見れば、事実はまったく逆だ。「今」ほど最高の時代はない…」
amazonの内容説明より)


まだ、上巻の100ページぐらいまでしか読んでいないが、
マット・リドレーの本と山本良一氏の話は、
現在へのスタンスが正反対な気がしてとても興味深い。
片や現状否定、片や現状肯定。
ただ、いずれも、その理由にしっかり筋が通っている気がして、
自分はどんなスタンスをとるべきなのか?考えてみたくなった。


『繁栄』、翻訳いや日本語がちょっと拙い気がするのと、
言ってることがちょっと重複する気がして、
実はちょっと飽き始めていて、
(私は自己を肯定・正当化しようとするとき「ちょっと」を良く使う)
大河ドラマが『江』、戦国時代になったことだし
知人が傑作と言っていた『のぼうの城』(和田竜・著)に
浮気しようかと思っていた。


ところが、セミナーの山本良一氏の話が面白くて、
今読みかけている『繁栄』は、この方の話と対極のスタンスに感じられ、
実際のところどのような歴史観に貫かれているのか?
知りたくて、たまらなくなった。
そんなわけで今、通勤電車の中で読書する片道30分が
愛おしくてたまらない。

坂道の向こうへ、坂道の途中から。

tinpan19732011-01-25

少し時間が経ってしまったが、
19日(水)SHIBUYA-AX
「さよならヤマハ渋谷店コンサート」へ。


竹内まりやさんが、
山下達郎さんを初めて生で見たのは、
学生時代のヤマハ渋谷店でのシュガー・ベイヴのライヴだった。
そのライヴを当時高校生だった佐橋佳幸さんも観ていらしたという
エピソードを昨年末の武道館で話されていた。


1985年6月国立競技場“ALL TOGETHER NOW”で
はつぴぃえんど(はっぴいえんど)が再結成したとき、
松本隆さんが久々にドラムを叩くので
当時詞を提供していたグループCCBのドラマーに
「スティックは何がいいか」聞いて、ヤマハ渋谷店で買い求めたこと。


そんなエピソードを思い出しつつ、
僕自身はヤマハ渋谷店は数度訪れた程度。
銀座店のほうがまだ訪れた回数が多い。
学生時代の夏、海の家の閉店イベントで素人バンドっぽいことを
するのに、山下達郎さんとサザン・オール・スターズの楽譜を買いに
行ったのが、そう言えばヤマハ渋谷店だったような…。


このコンサートへ行こうと思った理由は、
ヤマハ渋谷店への特別な思いというより、
やはり吉田美奈子さんが出演されることが大きかった。


島村英二D、岡沢章B、倉田信雄Kという
現在のYOSHIDA MINAKO & THE BANDの御三方も出演されるので、
ある意味安心できたし、ギターやコーラスや他の楽器で誰がどう絡むのか?
異種カクトウギ要素も期待できた。


「RIM」(2006年『Spangle』収録)
「TEMPTATION」(2002年『STABLE』収録)
という渋谷を題材にした2曲を演奏した。
いずれも21世紀になってから発表された楽曲。


「RIM」のギターは、椎名和夫氏だった。予想通り。
美奈子さんとは古いお付き合いであるし、
1993年中野サンプラザのライヴでもギターを弾かれていたし、
1995年『EXTREME BEAUTY』ではプログラミングを担当されていた(はず)。


「TEMPTATION」は、ギターは斉藤秀夫氏だったか(記憶が曖昧)?
宮崎 隆睦さんのサックスと、小坂明子さんのコーラスが
今も印象に残っている。


それから、美奈子さんがコーラスで参加した
オープニングと終盤の中西圭三さんの曲。
Twitterで実現した向谷圭三プロジェクトの楽曲らしい)
この種のメロディアスなソウル・ナンバーの吉田美奈子コーラスというのは、
やはり絶品だと思った。1982年までの山下達郎作品では頻繁に聴くことができたけれど、
今はもうめったに聴けない。ましてや、コーラスをライヴで聴ける機会なんて、
こうしたコンサートでもない限り無理だろう。


サンプラザ中野さん「Runner」「大きなタマネギの下で」。
決しておカネを払って生で聴くことは無いだろうと思っていた曲も聴いた。
オンタイムで聴いたとき同様、心は動かなかった。
大沢誉志幸「そして僕は途方に暮れる」。これにはジ〜ンとした。
そういえば、オンタイムの、80年代半ばカップ・ヌードルのCMで聴いたころも、
いい曲だと思ってカセットに録音していたっけ。
小坂明子さん「あなた」。1974年の今ごろ、小学校4年生以来にじっくり聴くわけだから
ジ〜ンとしたかったけれど、ちょっと違和感を抱いたのは…、
キーがオリジナルよりだいぶ低かったからだと思う。


あとは、松方秀樹さんのYMOシャツや、ずらり勢ぞろいしたシンセの名機や、
向谷さんの貫禄の付き方に驚いたり…、いい時間だった。


最後の、このコンサートのために作られた曲「坂道の向こうへ」
(作詞・松井 五郎、作曲・山川 恵津子)を聴いて、
ナミダが頬を伝った。フシギだった。
そこまでこのコンサートに思い入れがあったわけでも、
この曲の詞世界への理解があったわけでもないのに。


伝説のお店がひとつクローズして、
そのお店に対して自分はあまりコミットしていない。
その中途半端な距離感が、何か自分の人生を象徴しているような気がしたのと、
あとは、“道”好きなのと(“ティン・パン・アレー”も“SIDEWAYS”も“道”です)
自分の人生は“いつも途中”だとふと感じたのと、
年齢を重ねナミダもろくなっているのも大きいだろう。
ナミダの意味としては…。


このコンサートは当日はもちろん、
後日2回有料でUstream配信されたそうである。
この辺りについての思いは、また機会があれば記してみたい。

もう一度ファンになった。

tinpan19732011-01-10

坂本龍一韓国公演の
20時からのパブリック・ビューイングを
六本木ヒルズのTOHOシネマズで観た。


昼の回を昭和音大で観たかったのだが、
今日は10時スタートで30km走る大会があったため、
仮眠をとって夜六本木ヒルズで観ることを選んだ。


教授の最近のライヴは、2009年3月のピアノ・ソロ、
12月のゲスト大貫妙子さんのライヴ、
2010年12月の大貫さんとの『UTAU』ツアーを
すべて東京国際フォーラムで観たけれど、誤解を恐れずに言えば、
臨場感・ライヴ感という意味では、今夜のパブリック・ビューイングが
(以降「PV」と略させてもらいます。長いので。略語キライなんですけど)
いちばんだった。教授の演奏時の表情など、実際のライヴの客席からは
まず伺い知れない。地球環境のために照明も抑え目なので、
「観る」というより「聴く」要素が強いライヴがずっと続いていたが、
今夜のPVでは自動演奏するピアノの動きまで目にすることができた。


六本木ヒルズのPV、曲が終わると拍手をするのか?
興味深く一曲目が終わるのを待った。私はすべきと思っていたので拍手した。
客席からの反応はまばら。この拍手、曲を追うごとに大きくなっていった。


ライヴそのものが素晴らしかったのも大きいと思う。
「Before Long」が聴けてうれしかったのと、
Behind The Mask」「Thousand Knives」をこのアレンジで聴くと、
ヒジョーの味わい深かった。「ハッピーエンド」なんてYMOバージョンとは
全く別の曲のように聴こえた。個人的に今夜の白眉はラスト二曲。
MC Sniperをゲストに披露した「Undercooled」とラストの「Aqua」。
今夜の象徴として、この二曲をこれからしばらく聴き続けるだろう。


それから今夜、再認識したのは、私にとっての
“ポップ・スター”“カルチャー・ヒーロー”としての教授の存在。
個人的に、韓国も、日本との関係も、好きじゃなかった。
Ustreamにも、Twitterにも、距離を置いていた。
ましてやそれをPVなんて…。
教授に対しても、『BTTB』あたりからは
一昨年の『Out Of Noise』の前まで、オリジナル・アルバムを買うことも
無くなっていた。


そういった私個人の偏見や先入観を、“世界のサカモト”は
軽〜く飛び超えてくれた。今夜、改めてファンになった。
“前代未聞”や“前人未到”を、
この人は死ぬまで追い求めてほしい。
ひょっとして音楽は世界を変えられるんじゃないか?
そんな気持ちになった2011年1月9日の夜だった。


前夜は、渋谷C.C.Lemonホールキリンジのライヴだった。
キリンジのライヴは4回目ぐらい。これもまた素晴らしかった。
音楽に関して、基本的に私は自分より10歳ぐらい年上の音楽家たちから
影響や感動を与えらえて来たのだけれど、自分より明らかに年下の
キリンジとバンドの面々から似たような思いを得られることに、
たまらなく幸せを感じる。

一年の計としての『ノルウェイの森』。

tinpan19732011-01-07

映画『ノルウェイの森』を観た。
この正月休みに、六本木ヒルズで。


ものすごく混んでいて、最前列しか席が無くて、
見上げるようにして観た。


事前情報は、映画化は基本的にOKしない村上春樹さんが、
このフランス人監督ならとOKして映画化に至ったという程度。
誰が出演してどんな内容かなど全く知らず。
原作のストーリーもカンペキには覚えていない状況。
ただ、この小説のもつ空気感は何となく覚えていて、
それがどう映画として表現されるのか?
それを期待して観に行ったのだと思う。


60年代後半という時代を、10年代の今映像化するのは、
意外と楽だったんじゃないか? 
スタイリストさんはやりやすかったんじゃないか?
と、映画を観てまず思った。
例えば、主演およびその先輩の男性のパンツ(ズボン)のシルエットを
見ても、あの頃と今はとても似通っている。
ロー・ウェストで細目、私が20代だった80年代とは対極のシルエット。
あとは女性の目と眉のメイクがも似ていると思った。


糸井重里さんが大学教授、
高橋幸宏さんが医療施設の管理人、
細野晴臣さんがレコード店の店長。
事前に全く知らなかったので、画面でいきなり見て驚いて、そして喜んだ。


学生運動ドロップアウトした糸井さんが、
活動家たちに突き上げられる先生役。
神経症を公言する幸宏さんが、メンタル・ケアする施設の管理人。
ビミョーにアイロニカルで面白かった。
フランス人監督っぽいウィットだと勝手に思った。
(キャスティングしたのは日本人に違いないけれど…)


最後のクレジットに
「コミュニケーション・デザイン 澤本嘉光」の文字を見たときは…。
少し悲しかった。この種の映画を作り、世の中の人びとに広く伝えるのに、
現在の広告界の著名クリエイターの力を借りなければいけないのか…?
いけないのだろうな。お正月映画は、相当のおカネが動く経済行為だ。
(それこそ、糸井さんに任せればいいのに…。
やらないか。今さら、この種の仕事は…)


小泉今日子さんも出演すれば良かったのに…。
功労者だったし、小説発表時にカルチャー・ヒーローだったのだから。
原作の『ノルウェイの森』が大ヒットした1988年ごろ、
キョンキョンがラジオ番組「オールナイト・ニッポン」で
この小説を面白かったと言ったことが売上にかなり貢献したというような
ことが、当時メディアで良く取り上げていた。


当時、たぶん1989年。
東芝EMIが所属アーティストによるビートルズ
カバー・アルバムを出したはず。
そのアルバムの中で、松任谷由実さんと高中正義さんが組んでカバーしたのが、
ノルウェイの森」だったな。
妙な味のある出来ばえだった気がする。ちょっと聴いてみたい。
Youtubeにあるかな…。


映画そのものは、このように記憶を走馬灯のように呼び覚ます
タイムマシーンとして機能した。
良かったどうかは…。う〜ん。自分にとっての直子像、みどり像が
あって、残念ながら、このお二人の女優さんはそれとはちょっと
距離があった。直子はあの人、みどりは…。う〜ん、ぜんぶ自分の知り合いの
一般人だからな…。ここじゃ説明できない。


というわけで、今年は少しは映画の話もしていこうと思います。
ティン・パン・アレーのSIDEWAYS”の
“SIDEWAYS”は考えてみれば、このBLOGを始めた2005年に
私が観た映画の中でいちばん好きだった作品からとったのだから。
ティン・パン・アレー”“SIDEWAYS”どちらも道を表す言葉であり、かつ
ティン・パン・アレー”=音楽、“SIDEWAYS”=映画
の象徴でもあったことを思い出した。