ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

夏の終わりのアンビバレンツ。

tinpan19732010-09-11

もうすぐ一週間経ってしまうが、
9月5日(日)東京JAZZの夜公演を聴きに
有楽町・東京国際フォーラムへ行った。


東京JAZZは、2001年か2年から始まったはず。
ハービー・ハンコックがイベント全体のプロデューサーという
ような位置付けで、会場も野外・味の素スタジアムだったはず。
一年目、二年目は、聴きに行った。


都心からの適度の距離、
完全なるアウトドアでなくサッカー場
それも20世紀の終わりに建てられた近未来を感じるスタジアムで、
20世紀の初めに生まれた偉大な音楽JAZZを聴く。
夏の終わり×野外×ライヴ…という組み合わせに、
東京JAZZは打ってつけのイベントだった。


なぜ三年目から行かなくなったんだっけ? 記憶が曖昧だ。
一年目、二年目といっしょに行った人と疎遠になったから?
ハービー・ハンコックが出なくなったから?
会場が野外じゃなくなったから?
理由はたぶん、このうちのひとつかすべてだ。


さて、9月5日日曜の夕方、国際フォーラムへ向かう。
さすがに日曜日なので開演まで少し余裕を持って出掛けた。
国際フォーラム前の広場には、食べ物の出店が出たり、
大型ビジョンから映像を流したりしていて人だかりがあった。
ヘーッ!
無機的なホール・ライヴを予想していただけに、ちょっと意外。
「東京JAZZ」なるフェスティバル的要素の強いライヴ・イベントを、
東京のど真ん中のホールで行ってしまうということでいいのか?
と違和感と抵抗感を抱いていたのだが、勝手な思い込みだったようだ。
ホールの内と外で、もっといえば近隣の丸ビルまでを巻き込んで、
「東京JAZZ」は行われていたのですね。私が間違っていました。


そうこうしているうちに開演時間が迫り、席に着く。
今回はギリギリでチケットをとったので席は2階席後方。
オープニングから2組を経て、本日の私にとってのメイン・アクト
渡辺香津美 featuring TOCHIKA ALL STARS”の登場。
一曲目は「Liquid fingers」! アルバムと同じだ!
イントロが流れただけでグッと来る。
発売から30年後に、『TOCHIKA』の曲を演奏するライヴを、
アルバムに参加したミュージシャンたちによるプレイで聴かせてくれるとは…。
しかもそのメンツが、マイク・マイニエリ! マーカス・ミラー
オマー・ハキム! ウォーレン・バーンハート!
ライヴ前々日ぐらいにこの情報を知り、聴いておかねば後悔すると思い、
予定を変更してこの日駆けつけたのだ。
アルバムの曲はほとんど演奏した。「遠州つばめ返し」まで演ってくれた。


30年前、このアルバムを聴いていたころ、高校二年生。
未来も将来も何も見えず、ユーウツとアンビバレンツが
日常のほとんどを占めていた。
30年後、このライヴを聴いていて、年齢は重ねたけれど、
自分はほとんど変わっていないと思った。


変わっていない。変わった。この種のライヴを聴きに来ると、
いつもこの二つの気持ちがせめぎ合う。
いや、それを楽しみに来ているのだろう。
それも「変わっていない」ほうの自分を感じたいのだ。
いいんだ。それぐらいの楽しみを自分に与えなければ、
未来と将来の区別がつかないまま一生が終わってしまう。


最後に登場したのは、ジャズ・クルセイダーズ
クルセイダーズでなく、名称をオリジナルに戻して今回登場。
ジョー・サンプルのピアノ。ライブでは初めてだが、
これも一生の宝物になるだろう。私にとっては、この人のピアノが、
ジャズをわかりやすく親しみやすくしてくれた気がする。
“クロス・オーバー”や“フュージョン”という言葉とともに。


クルセイダーズ…。学生のとき、サンタナに乗っていた友人の
クルマの中で良く聴いた。あれから四半世紀ぐらい。
その友人のクルマはやがてBMWになり、
そういえば先日子どもが生まれたな。おめでとう!
変わっている。やっぱり。自分も。自分をめぐる世界も。