ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

声が、詩。

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十二月の雨の歌を、もうひとつ。

今から17年前、1988年の年末、雑誌『ADLIB』のインフォメーション・ページで、
さほど大きくない、けれど衝撃的な記事を目にした。

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ひとまず、今は「できた!できた!」とだけ言っておこう。吉田美奈子さんの6年ぶりの
NEWアルバムがこの度、完成。映像ソフトの企画・販売を手掛ける創美企画から、
来年2月に発売となる。麗しいまでのコーラスの曲がある。
8分にならんかというピアノ弾き語りの曲がある…。
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このような内容だったと思う。
以降、実際に耳にするまで3ヶ月を要した。
当初2月発売の予定だったが、消費税導入となる1989年4月1日以降に
発売日が変更されたのだ(4/5か10発売だったと思う)。

さすがに私は我慢できなくなり、ツテを探しまくった。
幸いなことに、出版社に勤務する友人がサンプルを入手していて、
3月中旬ごろに聴くことができた。

『ADLIB』に掲載されていた記事の8分のピアノ弾き語り曲、
それがアルバム『ダーク・クリスタル』のいちばん最後の曲
「December Rain」だった。
矢野誠氏のピアノと、美奈子さんの声のみ。
だけど、いや、だからこそ、こんなに、スゴイ。スバラシイ…。

♪言葉では云えない想いがある 痛みとはちがう心がある
冬の雨のような深~い愛を歌った楽曲である。
いや、でも、たぶん、ひょっとしたら、詩はいらないのかも知らない。

タイトルさえあれば、あとは美奈子さんのスキャットだけで、十二月の雨の
珍しさ・儚さ・冷たさ・寒さ・寂しさ・悲しさ・切なさ・美しさ…、
考えられ得る形容詞すべてを表現できるのではないだろうか。
坂本龍一氏「黄土高原」や、後年のNHK朝ドラ主題歌「すずらん」のように。