ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

わからない。歌われない。聴いてみたい。『扉の冬』

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先週土曜日の余韻から醒めてしまわぬうちに、記しておきたかった。
しかも今日のような三寒四温の「寒」の日に、書いておきたかった。

土曜日「Pide Piper Days」の会場は、丸の内KENWOODスクウェア
丸の内にこんなショールームがあるのは知らなかった。
ほど近い数寄屋橋ソニーのビルや、目黒にパイオニアショールームがあるのは
知っていたけれど。

このようなイベントに会場を提供していただけることにも頭が下がるが、
実際、ある程度以上のクオリティの音響機器で、ある程度以上の音量で、
ティン・パン・アレーの方々の音楽を聴くと、もうそれだけで、
心が震えてしまうのだと思った。

KENWOODというブランド、今まであまり縁がなかったけれど、
このイベントを通じて私の中で一気にブランド・イメージが向上した気がする。
いや、待てよ。KENWOODの旧社名はたしか、トリオ(TRIO)。
ティン・パン・アレーとは、切っても切れない間柄じゃないか。

1973年9月21日、文京公会堂ではっぴいえんど解散コンサートが行われた日。
同ステージに出演した吉田美奈子さんと南佳孝さんのデビュー・アルバムが、
この日発売されたのだった。

発売元はトリオ・レコードのショー・ボート・レーベル。
『扉の冬』と『摩天楼のヒロイン』。作品のクオリティの高さとは相反して
セールス面では失敗に終わったそうだ。ショー・ボート・レーベル自体も
尻すぼみに終わったというようなことが、『風都市伝説』に記されている。

『扉の冬』は、吉田美奈子さんと細野晴臣さんとミキサー吉野金次さんがプロデューサー。
アレンジは美奈子さんとキャラメル・ママがクレジットされている。

静謐なカンジがする。密やかに香るソウル・ミュージックという趣き。
同年の細野さん『HOSONO HOUSE』と、似たような音世界が広がっている。
(ミキサーと演奏者がいっしょだから当り前か)。

詠われる詩の世界は、難解だと思う。難しい言葉は使われていないのだが、
内省的というか自閉的、閉ざされている気がする。同時代を歩んでいない人にとっては、
あるいは相応の感受性を持ち得ない人にとっては、理解できない世界なのではないか。

美奈子さんが、この『扉の冬』について言及することは、もうほとんど無い。
「週末」以外は、Liveで歌われる機会も、ほとんど無い。
楽曲については、つたない自己の想像力で味わうから、
せめて「扉の冬」を生で一度聴いてみたいものだ。