ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

山下達郎氏の雨の歌には名曲が多い。

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2月は冷たい雨で始まった。
私の勤務先は六本木の外れにあり、窓から六本木ヒルズが見えるのだが、
今日は雲がかかっている。

灰色の雲に覆われ、ビルの真ん中から上が見えない六本木ヒルズ
バベルの塔”のようであり、映画「チャーリーとチョコレート工場」の工場のようであり、
強制捜査から逮捕へと至った例の出来事を象徴したような情景が広がっている。

♪見えるものは指の間をつたって落ちる雨 
 道の向こうそびえたつタワー もうすぐ空へ届くだろう

山下達郎氏「2000トンの雨」。池袋にサンシャインの高層ビルができ、
これを首都高5号線から見た風景を心象に重ね詩にしたらしい。

1978年『GO AHEAD!』の最後を飾る曲。
2003年映画『恋愛寫眞』のエンディング・テーマに使われるのを機に、
新たにヴォーカルを録り直しNEWヴァージョンとしてシングル発売。
(78年当時は制作予算・時間が限られていたため、
 最後のシワ寄せは歌に来て、いつも明け方にヴォーカル録り
 不本意なものが多かったそうだ)
そして最新作『SONORITE』にも収録されている。

雨を詠った山下達郎氏の自作詩には、名曲が多いと思う。

僕の想いを伝える術はないのに、雨は降り、ビルは高くそびえる「2000トンの雨」。
表参道の地下鉄の入口付近をイメージし、
表参道ヒルズがもうすぐOPENして、この風景も変わってしまう)
10日ぶりの雨の日の風景とハートブレイクを重ね合わせた「スプリンクラー」(1983年)。

シュガー・ベイブ時代、「雨は手のひらにいっぱい」の詩を、
某女性シンガー・ソングライターに褒められて、それまで苦手だった詩を書くことに
自信のようなものが芽生えたという文章を読んだことがある。

叶わぬ想い、傷ついた心。非情、無情。孤独感、無常観…。
雨というのは、いろいろな心象を受け入れてくれる気象現象のようだ。
きっと世の中には、晴れの歌よりも雨の歌のほうが多いはずだ。