ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

90年代半ば、久々の歌声の向うに歓喜と気品を感じた。

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今日はちょっとだけ暖かい。こんな時に口ずさみたくなる曲がある。

5年、いや4年4ヶ月ぶりのアルバムだった。
この方のキャリアの中でも最も長い沈黙だった。
83~89年もオフィシャルなアルバム・リリースはなかったが、
86年の自主制作盤『BELLS』があった。
待ちに待った甲斐あって、神々しいまでの作品を届けてくれた。
1995年2月発売、吉田美奈子さん『Extreme Beauty』。

“声”をテーマに作られたアルバムということで、
1曲目のゴスペル・マナーの「Voices」から
10曲目クラシックのベルカント唱法を彷彿させる「星の海」
(故ペーター佐藤氏へのレクイエムでもあるそうです)まで、
美奈子さんの多種多様な歌声が味わえる。

“声”がテーマだからなのか、美奈子さん以外の方の歌声も聴くことができる。
70年代後半から80年代にかけて一世を風靡したコーラス、達郎・美奈子コンビ。
その山下達郎さんが2曲にコーラス参加。
前日ご紹介した『FOR YOU』以来、実に13年ぶりの共演が実現したのである。

ワシントンGo Goビートに、キャッチーなメロディーを乗せて、
陽光の煌きを歌う「BEAUTY」。サビの
♪そっと眼を閉じながら愛のこと考える~
から、達郎氏のコーラスが重なってくる。それだけで、もう…。
冬の寒さも春の温もりに変わってしまう気がする。

もう1曲のコーラス参加曲「Liberty」に関しては、
美奈子さんヴァージョンが聴けるだけでまずうれしかった。
SonyのCM曲であり、鈴木雅之氏への提供曲だった)
その上に達郎氏のコーラスが加わるとなると、もう
“生きていて良かった”の境地に達してします。

これ以外の曲については、また機会を見て記したいが、
とにかく名曲オン・パレード。
前2作『DARK CRYSTAL』『gazer』の硬質で先鋭的なイメージが後退し、
(それはそれでスバラシイ作品であったが…)
万人受けというか吉田美奈子さん初心者や入門者にも聴きやすい作品に
仕上がっていると思う。

♪緩やかに陽光の渦煌いて 表へ誘う午後
 金色した縁で光る 噴水の水を飛ばす公園で

暖かくなるまで、あとちょっとだ。