ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

90年代始め、厳しさの向うに温かさを感じた。

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厳しい寒さが続いている。そろそろ春が、待ち遠しくなって来た。
今日から三日間(の予定)、春待ちアルバムを特集することにしよう。

春待ちアルバムとは、
①発売日が1月か2月であること
②陽光きらめく春を感じさせる楽曲があること
③実際に私がオンタイムで聴いた作品であること
と定義しよう。

というわけで、本日は大貫妙子さん1992年2月26日発売『DRAWING』。
MIDIから東芝EMIへ移籍第一弾。

前作『NEW MOON』で始まったアレンジャー小林武史氏とのコンビの二作目。
小林氏とは三作コンビを組んでいて、
私個人は『NEW MOON』が一番好きな作品だが、
大貫さんご本人はこの『DRAWING』らしい。
三作目『Shooting Star in the Blue Sky』はそのあからさまなポップさが、
大貫さんの本質とちょっと乖離しているように感じる。
もっとも小林氏のもつそのポップ・センスは、その後
桑田圭祐氏やMy Little Loverの作品でセールス的成功を収めるわけだが…。

アルバムの主要曲は、N.Y.録音。当時ピーター・ガブリエルのサポート・ミュージシャンを
務めていたジェリー・マロッタ(D)、トニー・レヴィン(B)をリズム・セクションに起用。
前年(91年)秋に出たピーター・ガブリエル『US』を愛聴していた日々だったので、
大貫さんのNEWアルバムのバック・メンバーを知ったときは歓喜した。
実際聴いてみて「What to do ‘cause love you」のトニー・レヴィンのベース・プレイなど、
ゾクッとするほどカッコイイ!

冒頭2曲「OKAVANGO」「White Wolf」は、当時ガラパゴスや南極を旅し
ネイチャー雑誌『SINRA』に寄稿していた大貫さんのアーティチュードを感じさせる楽曲。
3曲目「素直になりたい」は、「結婚」という言葉が出てきたり
大貫さんにしてはちょっと俗っぽい詩かなと思ったが、
メロディーはキャッチーで、当時J-WAVEでよく流れていた曲。
続く「dreamland」は全日空CMに使用された先行シングル。
あとトピックとしては、「静かな約束」が映画『ポンヌフの恋人』の
日本用イメージ・ソングとして起用された。
(ちなみに、この映画のフランス語→日本語字幕は、
 第二期シュガー・ベイブのベーシスト寺尾次郎氏が担当)

と、ここまで書いてきて、実際にアルバムを改めて聴いていて
直接的に春を歌った曲がないことに気づいた。
(アレ、「春の手紙」って、次のアルバムか。収録されたのは…。
 いかん。記憶力が衰えている)

いや、冬の厳しい情景を描いた詩が多いのだが、
そのサウンドと大貫さんのヴォーカルが、
その先にある希望・温かさといったものを感じさせてくれるのだ。

90年代前半、春先によく聴いたアルバムである。