ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

1989年世界音楽の名所旧跡へ。「omni Sight Seeing」が誘うところ。

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1989年が、1975年のような特別な年であると思うに至ったのは、
やはりこの方の動向が大きい。
細野晴臣氏、いつも時代の節目で象徴的な活動を行い、ムーブメントの中で重要な役割を果たす。

83年のYMO散開後、細野さんはテイチクと契約、
“ノン・スタンダード” “モナド”2つのレーベルを立ち上げた。
この時代のお話は、実際に“ノン・スタンダード” にスタッフとして関わられた
nov46さんがブログ(URL下記)で語られていますので(ちょうど今)こちらをご参照ください。
http://d.hatena.ne.jp/nov46/

そのテイチクとの契約を終え、レコード会社をEPICソニーに移籍して
89年7月21日に発売されたのが、この「omni Sight Seeing」。
(大文字と小文字の表記、また単語の括り方も?ですが、
 アルバム表記に準じます。何せ細野さんですから…)

世界の音楽シーンの現況(当時)と、
90年代から今日へとつながるさまざまなキーワードを提示してくれた
という意味で大切なアルバムです。

余談ですが、現在このアルバム、廃盤のようですね。
(どうしたSony!この辺りにもアップルの後塵を拝している一面が)
80年代から90年代へと変わる日本の音楽史にとって、重要な一枚だと思うのですが…。

このアルバムで、細野さんは、
アラブの伝統音楽とパリのテクノとの融合により生まれた “ライ”をはじめ、
この後日本でブームとなる“ワールド・ミュージック”を私たちに教えてくれた。

他にも、クール・ジャズからミニマル・ミュージック、アシッド・ハウス、アンビエント
さらには日本の民謡まで…、さまざまな音楽を引用している。
各々の音楽に対峙するスタンスは、「観光~サイトシーング」。
あの弥治さん喜多さんのような物見遊山のスタンスが日本的で好ましいらしい。

「単なる観光でなく、アストラル・トリップともいえる幻想的観光旅行を、
まるでオムニバスのようなバラバラな音楽群で表現したんだなあ、
と思っていただきましょうか」
「拝金主義と色欲の渦巻く時の流れに決別し、霊的飛行による輝く世界への旅、
 あらゆる方向、次元への観光。これが『オムニ・サイトシーング』」
と、アルバムの中のブックレット冒頭に書かれています。

「アンダトゥーラ」「コレンドア」「プリオシーヌ」…、
各曲のタイトルは、相変わらずニューエイジっぽく意味深。
楽曲ごとの解説も記されています。聴くだけでなく、読むことでも楽しめるアルバムです。

このアルバムの制作風景は、1990年1月(だったと思います)に
NHKスペシャル細野晴臣の音楽漂流」(というタイトルだったと思います、
現在VHSデッキ故障中のため確認できず)として放送されました。
あと「OMNI SOUND」(リットー・ミュージック)と「ENDLESS TALKING」
(現在は平凡社ライブラリーから文庫になっています)という書籍が、
このアルバム発売後に出ました。こちらを合わせてご覧いただけば、
理解が深まることでしょう。