ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

「SONORITE」そして山下達郎氏へのアンビバレンス。

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今日は思い切って山下達郎氏のことを書こうと思う。
この9月にNEWアルバムが発売されたので、すぐにでも取り上げたかったのだが、
ちょっと慎重になっていた。なぜかというと…。

91年「アルチザン」あたりから、
発売されたアルバムそのものよりも、
発売時にメディアで語る言葉のほうが面白いと感じるようになってしまったからだ。

その後7年経って「COZY」。さらに8年経って「SONORITE」。
その間、企画盤や竹内まりやさんのアルバム制作を行っているため、
活動自体はコンスタントらしいが、
オリジナル・アルバムが出るまでの間隔があまりに長い。

アルバムそのものは、その間のタイアップ・シングルが多く収録された
オムニバス盤の趣き。純然たる新曲は少なく、トータリティは今いち。
「COZY」など15曲収録で、「こんどのアルバムは五目味」との発言があったが、
これだけ収録曲が多ければそれも然り。
「GO AHEAD!」の「五目味」とは全然意味がちがうと思った。

アルバム制作にかける時間も、予算も、潤沢になってから、
逆に音楽そのものがツマラナくなってしまった。
プロモーション時のメディアでのラディカルな発言とは裏腹に、
音楽はどんどんコンサーヴァティブになっている。

若手ミュージシャンが次々にカヴァーし、
旧譜がジャニーズ系タレントの目玉ドラマの主題歌に今さらながら使用され、
音楽ジャーナリズムはただ称賛するばかり…。
どんどん「裸の王様」になってしまう気がしたのは、
聴き手である私自身が年齢を重ねてしまったからか?

このような先入観をもって、こんどのアルバムを聴いたのだが…。
イヤ、悪くなかった。良かった。新鮮だった。
「僕の中の少年」以来だと思う。購入直後こんなに繰り返し聴いたのは。

このところ達郎氏のラジオをあまり聴けなかったので、
TV番組や映画やCMのタイアップ曲もそれほど馴染みがなかったからなのか、
トータルとしてアルバムが聴けた。

「風がくれたプロペラ」「白いアンブレラ」など大好きだ。
「MIDAS TOUCH」の適度の黒っぽさは心地いいし、
「太陽のえくぼ」のような曲はずっと作りつづけてほしい。

ただ、「FOREVER MINE」のバラードはちょっとヌルく、
(「さよなら夏の日」以降のバラードのヌルさについては、また機会があったら記したい)
「SECRET LOVER」は詩がイマイチだと思う。
(こういう詩は、やはり吉田美奈子さんか松本隆さんでないと)

と、いろいろ勝手なことを書いてしまいましたが、
皆さまはどのようにお聴きになりましたでしょうか?