ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

「海辺のカフカ」のコードは…?

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今日は小説の話。最後に音楽に着地する。

私は村上春樹氏のファンではない。
かなりの作品を読んでいるが、
1999年「スプートニクの恋人」を読んだ後、
「もうこの人の作品を読むのはやめよう」と決意した。

理由はいろいろあるが、大きな理由は2つ。

ひとつは、タイトル。
登場人物の女性が「ビートニク」と「スプートニク」を間違えて、
それによりこのタイトルとなったようなのだが、
あまりにリアリティがなさすぎる(「まちがえるか?フツー!」というカンジ)。
ケルアックに、バロウズに、失礼だろうと思った。

もうひとつは、主人公。
“永遠のボクちゃん”ぶりに愛想が尽きたというか、
相変わらずモラトリアム少年が主人公で、現実逃避するストーリー。
このころ私は、地に足を付けた生活をしようと切に思っていたので、
たとえ小説の中とはいえ、リアリティが無さ過ぎる主人公の生活ぶりに
腹を立てた。もう二度とこの人の作品は読まないと心に決めたのだ。

その後の「アンダーグラウンド」。
村上氏とオウム真理教、興味はそそられたが「もう騙されないぞ」と
自分に言い聞かせ、読むことはなかった。

そんな日々も昨2004年「アフターダーク」であっさり終わる。
発売時に遭遇したトレイン・ジャック(電車の一両まるごとこの作品の広告)が
カッコよかったのと、装丁もいいカンジだったので、
「これは内容も面白いのでは…」と思ったのだ。

しかし、期待は裏切られた。話が薄っぺらで、しかも短かすぎると思った。
「市販のツナ缶を食べ過ぎると、リンだかスズだかが体内にたまる」
ということぐらいしかもう覚えていない。

それなのに、最近、発売から数年たって「海辺のカフカ」を読んでしまった。
なぜ読んでしまったか、理由はあえて記さない。偶然が重なっただけなのだ。
イヤ、この小説によると、世の中に偶然はなく、
起こりえることは全て必然らしい。だと、すると、読むべきして読んだのだろう。
今日と明日のこのブログの題材に悩まないように、
神様が指示してくれたのだと思うことにする。

たった今読み終わったのであるが、面白い。
ねじまき鳥クロニクル」以来だ。この読後感は。

相変わらずエスケープもので、
相変わらず登場人物は
サンドウィッチやオムレツといった洋食をよく食べて、
(食べる描写が多いんだ。この人の小説は)
21世紀になって15歳の少年が、
トップ・サイダーのデッキ・シューズ(80年代じゃないんだから…)を履くか?
プリンスを聴くか? と突っ込みたくもなるのだが、
オモシロイのだ。あっという間にページが進むのだ。

本当は、実存とか、自我とか、フロイトとか、ユングとか、
その辺りのことを記したいのだが、原稿用紙が20枚は必要になるので、止める。

ただ、これだけは言っておこう。
架空の女性シンガー・ソングライターの大ヒット曲というのが、
この小説の中に登場する。

少女が作った曲なのだが、サビのある部分に
常人では考えつかないコードを使用するらしい。

即座に想い出したのが、荒井由実ひこうき雲」。
(シングル発売はされていないので何百万枚も売れていないが)
現在の伴侶である正隆氏が、レコーディング時初めてこの曲を聴いたとき、
このコードにショックを受けたといわれる
♪空を駆けて行く~の「B♭m7」を。

*この小説の文体と似せて書いてみようと思ったのだが、
タチの悪い冗談みたいで申し訳ないです。
まあ、それも運命ということで。
(どうやら読者を運命論者にしてしまう本のようです)