ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

「Bells」と私の二十年。

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六本木ヒルズけやき坂のイルミネーションが今年も始まった。
青色ダイオードが主体のこの電飾たちを、
一昨年だったか公式ページで吉田美奈子さんは
とても吉田さんらしく表現されていた。

もうすぐクリスマス、というわけで今日はあの名盤「Bells」について。

このアルバムが世界初自主制作CDとして3,000枚限定で発売された
1986年、私は吉田美奈子さんファンではなかった。
翌1987年8月よみうりランドEASTでの「ピットイン10周年記念ライブ」、
一日限りで再集合したKILYNが観たくて駆けつけたが、
黄昏時に富樫春生氏とのデュオで登場した吉田美奈子さんの
歌声に、とにかく魅了されてしまい、それからファン歴がスタートしたのだ。

「Bells」という名盤があるらしいとの情報は、
当日のコンサート・パンフにも書かれていたのですぐに知ったが、
当然もう販売されていなくて、初めて音を聴いたのは1989年1月。

《ただ、「Christmas Tree」は、
 この8月のピットイン10周年記念ライブでも聴けたし、
 この年(87年)12月FMで美奈子さんのスタジオ・ライブが聴ける機会があった。
 富樫氏ピアノで演目は「Morning prayer」「時よ」「Christmas Tree」。
 この番組を録音したテープを擦り切れるほど愛聴した。
 歌詩を聞き取り書き起こし、コード譜も起こしてキーボードで歌ったりした。
 クリスマスを歌った名曲は数あれど、
 この曲を上回る楽曲を私は知らない》

前年1988年12月中野サンプラザでの山下達郎氏コンサートの
当日券で並んでいた際、前に並んでいらした方と、
とりとめのない会話をしていたところ、
吉田さんのアルバムをすべて持っていらっしゃるとのことだったので、
この「Bells」をカセットテープに録音していただいたのだ。

(前日も記した通り、インターネットもヤフオクもないこの時代、
 吉田さんファンは思いやりの精神にあふれていた)

いや、もう、スバラシイに尽きる内容。
一曲目、坂本龍一氏が「あの声はサンプリングじゃないと出せない」と絶句したという
息の長い多重コーラス「WIND」から始まって、「Christmas Tree」「Pavement of Light」…。

カンヌ広告祭で銀賞を受賞したサントリーCM曲「Thanks to You」は、
ゼッタイに美奈子さんのこの一人アカペラが受賞に果たした役割が大きいはずだ。
(英語で歌われているため、主要審査員であるアングロ・サクソン系にもアピールできる)
(91年ごろ、スバル「アルシオーネ」CMに
 やはり一人多重コーラスによる「5,000 miles」が使用されたが、これもスバラシイ。
 アルツハイマーの方がこの曲を聴き涙したというエピソードも読んだことがある。
 ご本人はおキライかと思いますが、ぜひCMソング集をご一考ください)

「Thanks to You」は、美奈子さんのコンサートの客出しの曲として
90年代よく使われていましたが、
92年、私も友人(上記「ピットイン10周年記念ライブ」にいっしょに行った)
の結婚式の最後のスピーチ直後に流れる曲に、
この「Thanks to You」を使わせていただきました。
「愛情」「尊敬」「感謝」…、
普遍的でスケールの大きい概念を、
ものすごくシンプルな英語で表現した楽曲。
自分でチョイスしておいて自分でナミダしたものでした。

時を経て2000年、このアルバムが、御茶ノ水駿河台交差点近くのレンタル・レコード店
(店名忘れました。当然ですが大手チェーン店ではないです)
レンタルできることを知りました。
それを教えてくれたのは、インターネットでの美奈子さんファンが集う掲示板だったと思います。
録音テープがもう擦り切れそうだったので、すごくうれしかった覚えがあります。

そして、2年後の2002年、めでたくこのアルバムは、
「もみの木」を加えリ・イッシューされavex ioから発売されました。