ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

初心者のための音楽?

tinpan19732010-03-16

週明け月曜日の昼間、久々に六本木に出た。
多少時間があったので、本屋でゆっくりすることにした。


10年以上前、六本木の駅の上に会社があったころは、
青山ブックセンターで本を見て、
WAVEでCDやビデオをチェックするのが、
昼間サボるときの黄金パターンだった。


WAVEは今はもう無く、その後六本木ヒルズになってしまった。
青山ブックセンターは一度(か二度)ツブれたものの、
経営陣を変えて今も存続している。


今日は青山ブックセンターまで行っている余裕は無いので、
駅上のあおい書店に寄ることにした。
青山ブックセンターとあおい書店の違い…?
1998年だったろうか。大滝詠一氏(この場合は大瀧詠一?)の書籍
『Go Go NIAGARA!』が復刻されたとき、発売日に買い求めに行ったのだが、
あおい書店では見当たらず、店員に尋ねたら取り寄せと言われた。
一方、青山ブックセンターでは音楽コーナーに平積み。
僕があおい書店より青山ブックセンターを好んだのは言うまでもない。


とはいえ、オヤジの街・新橋の片隅で働いている今の自分から見ると、
あおい書店の壁面一面音楽コーナーは有り難かった。
『ADLIB』に『ストレンジ・デイズ』『レコード・コレクターズ』最新号を
ザッと眺めた後、ミュージック・マガジン増刊号“90年代特集”
(正確なタイトルを忘れた!)に目が止まる。


もう、90年代が特集される時代になったんだ…。
オンリー・イエスタデイもオンリー・イエスタデイ。
つい、この間のことだと思ったのに…。
考えてみれば、もう00年代も終わって2010年だもんね…。


しばし感慨に耽りつつ、じっくり読んでいるほど余裕は無い。
巻末に五十音索引があったので、気になる音楽家を検索する。


山下達郎さんは『ARTIZAN』で大きく一ページ、
さらに『COZY』と90年代のオリジナル2作品がいずれも掲載されている。
吉田美奈子さんは1作品も取り上げられていない。
95年『Extreme Beauty』は取り上げて然るべきと思うが…。


大貫妙子さんは97年『Lucy』、矢野顕子さんは92年『Super Folk Song』。
これは妙にナットク!


思い立って、スガシカオさんを調べてみると
『CLOVER』が取り上げられていて、「村上春樹を唸らせた…」云々の
記述が予想通りされていた。


キリンジは一枚目『ペーパー・ドライバーズ・ミュージック』だった。
僕が彼らの音楽を知り、好きになっていったのは、完全にBlogの影響。
Blogを通じて知り合った皆さんのキリンジに関する文を拝読し、
興味を持って、聴くようになって、好きになった。
彼らが、ジャーナリスティックに、特にミュージック・マガジン的に
どう評価されているのか?そう言えば知りたいと思っていたんだ
ということを思い出し、仕事に戻るまでの時間を気にしつつ読む。


このキリンジに関する文を書かれた人の名は覚えていない。
ほぼ共感。特に“スティーリー・ダン的こだわり”という部分など、
「その通り!」と思った。
ただ、最後にタイトル『ペーパー・ドライバーズ・ミュージック』を
「初心者のための音楽」と表現していたが、そこには大いに違和感を覚えた。


僕たちの音楽は、ドライバーズ・ミュージックじゃない。
隣に彼女を乗せてクルマの中で聴く音楽じゃないよ。
80年代の本人たちの意志とは無関係にそのような聴かれ方をした、
ユーミンだったりタツローだったりサザンだったりとは違う。


反・ナンパ音楽、
アンチ・シティ・ミュージックというか。
Not“POPEYE少年”“JJガール”音楽。イヤ、90年代のこの時期は、
もう雑誌『POPEYE』も『JJ』もかつての輝きを失っていたか…。
2010年の今でいうと“草食系音楽”とでも訳すべき
タイトルの意味だと思うのだが…。
“オタク・ミュージック”でもいいのかも知れない。
かなり完成度が高く、開放的な…。


マニアック・緻密さ・計算高さを突き詰めてPOPに昇華している。
決して「初心者のための音楽」では無いと思うのだが…。
だって、ペーパー・ドライバーって、初心者じゃなくて、
免許をとって何年経ってもペーパー・ドライバーはペーパー・ドライバー
だと思うのだ…?


ホントのところはどうなんだろう?
詳しい人がいらしたらぜひ教えていただきたいものだ。