ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

読む春。

tinpan19732010-02-08

節分の日、富田ラボの新譜『Shipahead』届く。
まず、したこと。パッケージを開けて、
アルバム最後の楽曲「千年紀の朝」の詩を読んだ。


いつ以来だろう? 吉田美奈子さんの新しい詩を拝読できるのは。 
あれは…? そうだ。トリノだ! 4年前のトリノ五輪の開催中。
アルバム『Spangle』が発売されて、その詩を帰りの電車の中で
読んだのを思い出した。このBlogにもその時の様子を書いたような。
あの頃はまだiPodを持っていなくて、
詩だけ読んで、CDは家に帰るまで聴けなかった気がする。


夜明け前。夜が白む前を描いた詩だ。
ここ最近のライヴの終盤で歌われる「LIFE」も
こんな世界じゃないのかな?
この「千年紀の朝」が閉塞した時代の中の希望を詠っているように、
早く「LIFE」の詩を読める日が来てほしいものだ。


吉田美奈子の音楽のひとつの楽しみ。それは詩を読むという行為。
「わたし」「あなた」が全く登場しない時代もあったし、
これでもかと当て字を使いまくる時代もあった。
耳で聞くと「ゆめ」なのに、詩を読むと「夢」だったり
「幻想」だったり「錯覚」だったりした。
そんなところにダダイズムを感じた。


節分から三日後、寒い土曜日だった。
吉田美奈子&岡沢章&土方隆之による新生Cube“Triple Wind”ライヴへ。
岡沢氏がアコースティック・ベースを、
土方氏がアコースティック・ギターを奏でるアンプラグド編成ということで、
どんな音がするのだろうと興味津々だった。ファンの多くがそう思ったのか、
チケットを抑えるのをしばらく忘れていたら立見席しか残されていなかった。


ナルホド。こういう音がするのか。
「SHADOW WINTER」「SIGN OF DISTANCE」…と
最初の数曲を聴いて、音の世界観のアウトラインがつかめたような。
この編成でやれる曲、やれない曲、いろいろあるんだろうな。
と思っていたら、やれないと思われるタイプの曲「TEMPTATION」を
終盤やってくれたので、この方たちらしいなと思った。
「千年紀の朝」も披露してくれた。


個人的にこの夜のベスト・テイクは「GRACES」。
“Triple Wind”よろしく、サウンドから風を感じた。
この曲の歌詞にある“七つの海を渡る風”に出遭え、
“翼を持つ女神達の歌声”が聞こえた気がした。


「LIFE」「悲しみの上で」「時のストレイタム」「Christmas Backyard〜」
「Lung-Ta」詩を知らないまますっかりライヴの定番となっている曲が
この夜も演奏されて、しかもとても味わい深く聴こえた。


立春が過ぎ、三寒四温の季節。
この土日の寒さなど半端じゃない。
こんな振幅を繰り返しながら、やがて春は訪れるわけで、
「LIFE」や「悲しみの上で」の詩を拝める日も、
そう遠からずやって来るだろうと思いながら、
“頬を刺す北風の街を足早に〜”家路を急いだ。