ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

遠くへ行きたい。

tinpan19732010-01-09

今年も年越しはブルーノート東京
カウントダウンLiveだった。


今年はインコグニート
昨年のパット・メセニーほどの個人的な思い入れはなかったが、
どこか英国の匂いのするジャズ・ファンク
リラックスして楽しむことができた。
リーダーのブルーイはフランス系英国人。メンバーには
ジャマイカの人もいれば、チュニジアの人もいて、
単純に黒っぽいジャズじゃなく“ワールド・ミュージック”ファンク
として響いた。そのサウンドやヴォーカルが、僕の2009年の除夜の鐘だった。


年末年始の休暇は一週間。
存分に本を読んだりビデオを観たり音楽を聴いたりしたかったが、
昨年一年の毎日のように、例の如く瞬く間に過ぎ去った。
収穫と言えば村上春樹1Q84』を読めたぐらい。
ずっと読みたかったのだが、通勤電車の細切れ読書でなく、
時間があるときにまとめて一気に読破したかったので、
この年末年始はいい機会だった。


面白かった!
一巻目を読んでいるときなど、村上春樹の最高傑作だと思った。
登場人物のキャラクター設定に感情移入できたし、
高円寺、代々木、新宿、多摩、麻布、市川、千倉…
といったロケーション設定にも共感できた。


村上作品にとって重要な要素を占めると個人的に思っている
性 (=「生」だからだと思う) の扱い方も秀逸に感じられた。
『国境の南 太陽の西』を読んだとき、
「オイオイ“金妻”じゃないんだから…」と
その性の扱い方・描き方に不自然さを感じたものだ。
15〜20年前経った今でも鮮明に記憶しているあの違和感に比べると、
今作は断然ナチュラルでリアルに感じた。


あとは、“月”の描き方。
今作で何度か登場する“月”のシーンを読むたび、
意味がなければスイングはない』で村上氏が好意的に取り上げていらした
スガシカオさんの代表作「黄金の月」の世界が頭に浮かんだ。


二巻の終わり方が「エッ? これで終わり?」という感じだった。
ちょっと違和感…。案の定、三巻目が出るらしい。まったく…。


などと思っているうちに、休暇は終わり仕事始め。
いきなり現実。家と会社の往復の日々。息抜きといえば途中下車して、
あの店に行くか、あの店に行くかするぐらい。


旅をしていないなぁ。
インコグニートを聴いて、
英国やフランスやジャマイカチュニジアに想いを馳せたように、
村上春樹を読んで、
代々木や高円寺や多摩や千倉に想いを馳せたように、
ちょっと遠くへ行きたい。


物理的に無理ならマインド・トリップでもいい。
そのために音楽や小説に触れる時間を、今年もできるだけ確保したい。
と、ささやかな目標を掲げ今年も始めることにしよう。


皆さま、本年もよろしくお願いいたします。