ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

摩天楼の衣擦れ、女神たちのドレス。

tinpan19732009-10-07

先日の、晴海からお台場方面を見て浮かんだのは
“摩天楼の衣擦れ”でなく、停泊している“緋色の帆を掲げた都市”
だったなぁ。はつぴぃえんど(はっぴいえんど)「風をあつめて」
松本隆・作詞、細野晴臣・作曲)の歌詞さえ
二番と三番がテレコになってしまっている現状を憂い、
今日は詞について記してみよう。


“摩天楼の衣擦れ”
人気のない朝の珈琲屋、
今はたしかエクセルシオールになっている
渋谷の喫茶店「マックス・ロード」でヒマをつぶしていたら、
ヒビ割れたガラス越しに「摩天楼の衣擦れ」が
舗道をひたすのが見えたという内容(私の勝手な解釈)。
“摩天楼の衣擦れ”とは「帳」「精霊」「霊気」「空気」のようなものなのかな?


一方で、山下達郎『FOR YOU』(1982年)の一曲目
「SPARKLE」(吉田美奈子・作詩、山下達郎・作曲)には
“女神たちのドレス”というフレーズが登場する。


“女神たちのドレス”
七つの海から集まってくる女神たちのドレスに触れた途端に、
きらめき・どきめきが心に広がるという内容(私の解釈)。
“女神たちのドレス”に触れると“衣擦れ”が起こるだろう。
この“女神たち”とは「風」それも「天空高くから吹く風」なのではないか?


キモチいい風に吹かれる。
この風は七つの海を渡って来ているんだ。
そう思って、いつも目にしている風景を眺めてみれば、
ありきたりの風景が別の輝きを持って来る。
ルーティンな、いつもと同じ気分さえ、
いつもと違うときめきやきらめきに溢れて来る。
そんな歌なんじゃないかな。この歌は。


“摩天楼の衣擦れ”が「空気」、
“女神たちのドレス”が「風」。
どちらも目に見えないもの。
目に見えないものが、特別なものに見えてくる。
毎日が輝いてくる。
上質のポップ・ミュージックとは、
さりげないモノやコトをかけがえのないモノやコトに
感じさせてくれる。そんな存在。


今の自分に、そんな余裕が全くない。
このBlogには10日以上書き込んでいないし、
iPodも二日間、家に忘れたまま通勤している。
借りた本や読みたい本は貯まり、
家のハードディスクも録るばかりで容量がそろそろオーバーする。
そもそも、空を見上げたのはいつ以来だろうか?


この嵐が去ったら、季節は進み、日常は落ち着きを取り戻すだろう。
非常に大型の台風だそうだが、それほど暴れることなく、
舗道を浸すのは“摩天楼の衣擦れ”よりちょっと多い雨と、
頬に触れるのは“女神たちのドレス”よりちょっと強い風
程度であってほしい。