ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

虹の陰影。

tinpan19732009-07-20

日曜日の夕方、東の空に大きな虹が出た。
晴れているのに雨が降っていて、
「イヤだな。荷物が濡れてしまう」と思いながら、
駅から家への道を歩いていて、視界の開ける場所に出たら、
人びとが皆東の空を見上げていて、
ケータイで写真を撮っている人もいた。


太陽を背にして水を撒くと虹が出る。
小さい頃、そんな虹の作り方を知って、よく遊んだものだ。
この日は、気象が、そのルール通りに虹を作ってくれた。
沈み行く夕陽を背に、天気雨のようなパラパラとした雨。
東の空には、それはそれは大きな虹。


あの時間、世田谷区内で環八界隈にいた人は皆、
あの虹を見ることができたんじゃないだろうか?
花火でも見物するかのように、家族揃って家から出て来た人もいた。


虹の歌だと、ユーミンかな。
80年代前半、ガレージで水撒きして虹が出た様を歌った「夕涼み」。
1982年『PEARL PIERCE』収録。
原田知世さんのカヴァーも出色だった。


1983年にはスクエア(まだT.スクエアと名乗る前のはず)の
アルバム・タイトルと、収録各曲のタイトルと、
一曲だけ楽曲提供(インストゥルメンタル)というコラボレーションが
あったはず。ユーミンの1979年のツアー「マジカル・パンプキン」
伊集院静氏演出)のバック・ミュージシャンが、当時デビューしたての
スクエアだったことから生まれたコラボレーションのような気がする。


そのアルバム・タイトルが『うち水にRAINBOW』。
80年代前半のユーミンは、水撒きやうち水から生まれる小さい虹を
音楽にした。


90年代半ば、渋谷陽一氏の雑誌『BRIDGE』の渋谷氏との対談で、
虹の話が象徴的に出て来たことも思い出した。
あれは、そうだ。アルバム『THE DANCING SUN』発売時1994年だ。
「春よ来い」等を収録してユーミンにとって最も枚数が出たアルバムで、
その辺りを渋谷氏が言及したときに、
「虹の下では雨が降っている」「メサという頂上が平らな山」
この辺りの話を出して、世のブームと自らの創作活動の在り方を
語っていたと思う。


21世紀になると「虹の下のどしゃ降りで」という曲も生まれた。
2006年発売のアルバム『A GIRL IN SUMMER』に収録された
フィラデルフィア・ソウルのようなPOPなナンバー。
詞も「虹の下のどしゃ降りの中、待ち合わせしよう。
あなたの声を聞けば、きっと天気になる」
というような明るい内容。たしか、JRかauのCMソング。
(00年代のなると、アルバム発売の年代も、
 タイアップが何だったのかも、すぐに出て来ません)


80年代の小さい虹から、90年代そして00年代と、大きな虹。
美しい虹、だけれどそれは大いなる幻想で、虹の下では雨が降っている。
けれど、その、幻想さえも、明るいPOPチューンにしてしまう。
いくつかのブームやピークを乗り超えて来たユーミンならではの
境地かと、勝手に思ってしまう。


あ、それから、22日は日食だそうで。
東京で見られるか? 天気面で難しそうだ。
日食…。この辺りの天空現象の歌となると、吉田美奈子さんだ。
こんどの週末のLiveでは、そんな曲を聴くことができるかな?