ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

二つのアメリカの終焉。

tinpan19732009-06-21

最近、私の中で二つのアメリカが終焉を迎えた。
といっても、新聞やテレビを賑わしている
金融機関や自動車メーカーの話ではない。


ひとつは、アメリカで1933年創刊。
日本では1987年に創刊され、2009年5月発売号で
休刊となった雑誌『Esquire日本版』。


もうひとつは、アメリカで1920年創業。
日本に入ってきたのは、70年代後半のヘビー・デューティー・ブームの頃
だったろうか? 90年代半ばには日本法人が設立され、
店舗展開しているアウトドア・ブランド「エディー・バウアー」。


Esquire日本版』の創刊は、1987年の4月だったと思う。
当時私は大学卒業直後。この雑誌の22年間は、私の社会人生活と重なり合う。


就職した出版社を一ヶ月で辞めた。
その後、『Esquire日本版』編集部に押しかけて働かせてもらう。
そんな選択肢もあったなと今思う。
なぜそういう発想が浮かばなかったんだろう。
不必要に傷ついたり、行動に線を引いていた気がする。


その次の次、印刷会社で働いていたころだろうか。
平日夜12時前に家に帰れれば早い!そんな日々が続いていた。
Esquire日本版』がJ.マキナニー特集だった。
仕事の帰りに買い求め、電車の中で読みふけった。
そんなことを思い出した。
ダサいスーツに地味なネクタイ。
ウルサイ上司にワガママな得意先。
たまらない日々だったが、この、帰りの電車で
Esquire日本版』を読む時間だけは自由だった。


90年代に入り、広告の世界で働くようになってからは、
Esquire日本版』はもっと身近になった。
書店で買い求めるまでもなく、会社に置いてある雑誌になった。
仕事でお世話になったことも何度かあるように思う。


エディー・バウアー」については、私の出会いは1983年。
当時渋谷にあったセレクト・ショップ(という言い方はまだなかったか)
ミウラ&サンズ」か「キャンプス」で(「ビームス」じゃなかったはず)
キャンバス地の大ぶりのバッグを買い求めた。


ヨットの一週間程度の合宿に必要なものを収納でき、
洗濯機でガンガン洗えるようなものを探していて、
渋谷でたまたま見つけて買い求めたのを覚えている。


その後、90年代半ば、原宿を歩いていたら、
エディー・バウアー」の名を冠したショップが目に入った。
日本法人ができ、独自にショップ展開を始めたらしい。
ご祝儀のつもりで、ガムシューとパーカーを買った。


エディー・バウアー」、私にとっては「L.L.ビーン」と“VS”な存在。
ずっと「L.L.ビーン」のほうが好きだったけれど、
4〜5年前に父へのプレゼントを探しに、自由が丘にあるショップを
訪ねてからは、「エディー・バウアー」のほうが好きになった。
素材・デザインとも、「L.L.ビーン」よりゼンゼンいい。
価格設定も納得できる。「UNIQLO」登場後のアパレル・ブランドの
ひとつの生き方を体現している気がした。


この度の本国が倒産が、このブランドにどんな影響を与えるか?
報道によると日本の事業には影響がないらしいが…。


『Esuquire日本版』「エディー・バウアー」、
ゼンゼン書き足りていないな。いずれ、また、じっくり。


20年代、30年代のアメリカ…。
ジャズ・エイジ、フラッパー世代、ロスト・ジェネレーション
ヘミングウェイフィッツジェラルドゼルダ禁酒法
Once Upon a Time in America…。
自分にとって、それこそ、雑誌で読み、映画で見て、音楽で聞いて、
感じたアメリカが息づいた雑誌であり洋服であった。


雑誌を読みこなす。洋服を着こなす。
その雑誌や洋服が似合う人間になるには(音楽も)、
その雑誌や洋服の思想や歴史や背景をどれだけ理解し共感できるか
だと思っている。


単に面白いから読む。カッコイイから着る。
だけでももちろんいいんだけれど、違いますよね。
植草甚一さん。