ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

彼女のピンチは、僕等のチャンス。

tinpan19732009-05-23

災い転じて福。
火事場のバカ力。
吉田美奈子ライヴの醍醐味は、直前のメンバー変更等
トラブル発生時のほうが味わえるのかも知れない。


ザッと振り返っても、昨年夏のベース岡沢章氏がケガをされ
弟の茂氏が代役を務められたとき。
2001年秋の4 Gift Live。あのときは確かドラマーがトラブルで
村上“ポンタ”秀一氏がピンチヒッターという豪華さだった。
9.11事件直後の、世界も日本も自分の周囲も動揺していた空気を、
最後に演奏された、よりアメリカっぽく黒っぽくR&Bっぽく
アレンジされた「Liberty」が和らげてくれたっけ。


事前準備が万全でないことによる不安感や緊張感がステージに
何となく漂っていてピリピリしている。
そんな中で繰り広げられる音楽家たちの丁々発止のやりとりが、
プラスの方向に左右する。美奈子さんのライヴは、
そうなることが多いように感じる。


今回の目黒ブルース・アレイの二日間のライヴも、
明日が用事があるので今日行くしかなくて、
開演時間を確認しようとホームページをCheckしたら、
西脇氏病気のため出演者変更との報。
血湧き肉踊るというか“いざ鎌倉”というか、ゼッタイに行かなくちゃと
思った。何とか仕事が終わり、ギリギリ間に合った。


ライヴはあと一日あるので詳細は避けるが、いやスバラシかった!


代役を務められた河合代介氏はカッコよかった。
演奏も他の二人を上手く引き立てていたように感じた。


サックスの本間将人氏は、いい音色を聴かせてくれた。
次は、ぜひ、この人のサックスで、「頬に夜の灯」を!。


ギター&ヴォーカルの中澤“GATZ”信栄氏は、
ギターはもちろんだけれど、とにかく声がイイ。
初めて声を聴いたとき、ちょっと鈴木雅之氏に似てると思ったから、
この人のコーラスで「Liberty」が聴けたらとちょっと思った。
そしたら、最後、夢が叶った。


いろんな編成、いろんな演奏者で、数々の名演を聴かせてくれた
「Liberty」であるが、今日の、この、「Liberty」も、
間違いなくそのひとつに数えられるであろう。
いつも聴くと涙が零れてしまう楽曲だけれど、今日はまた格別だった。
アレンジも、編成も、演奏も良かったけれど、
何と言ってもコーラスが、ハーミニーが良かった。


中澤“GATZ”信栄氏は、アルバム『Extreme Beauty』(1995年)収録の
山下達郎氏のコーラスとほぼ同一のフレーズを聴かせてくれた。
感動した。
吉田美奈子さんのライヴは、バックの編成や演奏者はいろいろ変化しても、
ヴォーカルという面では、圧倒的に孤独だった。孤高だった。
岡沢章氏とのデュエットや、倉田さん等がコーラスで絡むことは稀にあっても、
ここまで美奈子さんと渡り合えるヴォーカリストはいなかった。


ヴォイス・バイブレーションというか、ヴォイス・コラボレーションというか、
声と声の交歓や交感を求めていたのだ。僕は長い間。
それが山下達郎氏だったらサイコーだけれど、
今日の中澤“GATZ”信栄氏もスバラシかった。


アカペラで完璧にハモるコーラスを、今度披露してほしい。
楽曲は、そうだな…、「Thanks To You」(『BELLS』1986年)か
「Night in Her Eyes」(『MONSTERS IN TOWN』1981年)あたりで。