ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

電車1時間のエトランゼ。

tinpan19732009-03-10

週末、川越を旅した。
小江戸と呼ばれる町への、日帰りの小旅行。
恵比寿から電車一本で約1時間。
こんなに近くに、こんなに味わい深い場所があるんだと思った。


蔵造りの町並み。
訪れたお寺の散りゆく梅の花
骨董屋で目にした陶器。
江戸に幕府が開かれる前の川越は、小田原と並ぶ関東の一大都市で、
川越城筑波山と同じぐらいの関東平野の一大ランドマークだったのでは…
などと思いを巡らす。


♪例え異国の白い町でも 風が長閑な隣町でも
 私はたぶん同じ旅人〜
松任谷由実「水の影」。1980年のアルバム『時のないホテル』の
ラストを飾るナンバー。私の場合、海外にそれほど縁がない生活を
送っているため、日本でエトランゼ気分を感じたときに、
この歌が頭の中に聞こえて来ることが多い。
エトランゼ、異邦人…。
思い描いていたイメージを上回る土地の魅力を感じたとき。


もう10年前になってしまったが、1999年に
ユーミンとロシアン・サーカスが共演した一大スペクタクル「シャングリラ」
の第一回ツアーが行われたとき、この「水の影」は本編最後に歌われた。


あの頃は、今とは違う忙しさで、
ユーミンのコンサート・チケット争奪戦に参加する意志もなく、
この「シャングリラ」はライヴでなくビデオで観た。


「水の影」がラスト・ナンバーとは意外だった。
しかし歌のパートが終わり、最後サーカスのピエロに扮していた
ロシア人がバイオリン(orチェロ)でこの曲のエンディング・ソロを
弾きながら登場したとき、観ていて涙が零れた。
松任谷正隆・由実コンビが、『時のないホテル』でやりたかったことが、
アルバム発売から20年近く経ったこの『シャングリラ』で
初めてわかった気がした。


ヨーロッパなりロシアなりの異文化と交流することで、
“エトランゼ・異邦人”感を表現したかったのだと思った。
“エキゾティック・ジャパン”とは違う。
これはアルバムだと『水の中のASIAへ』の世界だと思う。
“同質の中での異質”の表現。
『時のないホテル』『シャングリラ』で表現したかったのはその逆
“異質の中での同質”だったのではないか?


異国でも隣町でも、
♪私はきっと同じ旅人 遠いイマージュ水面に落とす
僕が川越で感じたのは“同質の中での異質”だと思うけれど、
今朝目覚めて、雨が上がったか外の水たまりを見ながら、
ふとこんなことを思いPCを立ち上げ今、記してみた。