ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

二月の雨の日は、プロコル・ハルム。

tinpan19732009-02-26

今週は月曜日から曇りや雨の天気が続いている。
菜種梅雨にはまだ早い。不思議な気候だ。


こんな天気が続くと、イギリスの音楽を聴きたくなる。
アラン・パーソンズ・プロジェクトだったり、プロコル・ハルムだったり。
今日はプロコル・ハルム『グラウンド・ホテル』を聴きながら、
会社へ向かった。


先日、会社の飲み会でソムリエの真似事をしたことがあった。
ちょっとしたケータリング・パーティのような企画で、
ワインを選び皆に振る舞う役割だ。あの日も雨が降っていた。
知り合いのスタイリストに衣装を相談したり、
本当のソムリエにワイン選びのアドバイスをいただいたり、
馴染みのワイン・バーから備品を調達したりして、それらしく振る舞った。
カッコはつけたかった。ジェントルにサービスしたかった。でも、心の中は…。
この『グラウンド・ホテル』のようなヒネクレ方をしたかった。
読んでも理解できない難解な隠喩や揶揄…、そんなものを大事にしたかった。
ニコリと笑いながらエライ人にワインを注いでいる。でも、心の中では…。


初めて、この『グラウンド・ホテル』を聴いた日も、
そういえば雨が降っていたと思う。二月のちょうど今ごろ、寒い日で、
明け方、霙まじりの雨だった。あれは、たしか23年前、1986年だ。


東横線祐天寺駅近くの先輩の家で麻雀をしていた。
僕は大学四年生になろうとしていた。
卒業していく一年上の先輩を送り出す、たしか最後の麻雀だった。
5人でやっていて、僕はたしか二位抜けで半チャンお休み。
先輩のレコード棚を漁っていたら、
この『グラウンド・ホテル』が出てきて、
「これ聴いていいですか?」と了承を得て聴き出したのだ。
この先輩の家で麻雀をするのは、いろんな音楽が聴けるので好きだった。


1973年のプロコル・ハルムの作品で、
ユーミンの1980年作品『時のないホテル』のひとつの(すべてじゃない)
モチーフになったと何かで読んだ覚えがあって聴いてみたかったのだ。


この1986年当時、僕はプロコル・ハルム作品だと
有名な「青い影」やアルバム『ソルティ・ドッグ』は聴いていたはず。
この『グラウンド・ホテル』は、この時が初めてだった。
重厚なんだけれど、プロコル・ハルムらしい荘厳さはないメロディーで、
何か詞がいつにも増して難解だなと思った覚えがある。


だけど、外の、霙交じりの雨が降るグレイの空と、
大学四年生になるのに未来や将来の見通しが何もない自分に、
非常にマッチして切なく響いた気がした。


四十代半ばの今も、相変わらず明日は見えない状況。
おまけに今、久々に膨大な仕事量が押し寄せて、
その日の退社時間も見えない状況。
天候だけじゃなく、自分の日常にもグレイな要素が多い日々。


明日も天気が悪そうだから、明日のiPodの一曲目は
荒井由実「雨の街を」にしようかな。
あ、アラン・パーソンズ・プロジェクト
『アイ・イン・ザ・スカイ』『アンモニア・アヴェニュー』それから
80年代半ばの「Days Are Numbers」が入っているアルバムを
(タイトルが思い出せない。こんなことが最近多くなった)
amazonに注文しよう。カセット音源のままだ。


3月から5月の雨の日は、
プロコル・ハルムよりアラン・パーソンズ・プロジェクトのほうが、
しっくりくる。