ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

カッコイイ&インテリジェンスの好き・嫌い。

tinpan19732009-02-01

水曜日のデヴィッド・バーン@渋谷AXは、
30分遅れで駆けつけることができた。


バンド・メンバーやダンサー含め、
全員白づくめの衣装。私が駆けつけたときは、
ブライアン・イーノと共演した最新作の曲を
演奏していた(と思う)。


血湧き肉踊ったのは、気持ちが一気に昂ぶったのは、
数曲後アルバム『Remain in Light』の一曲目「Heat Goes on」の
イントロが聴こえてきたとき。
♪Gose on, Gose on〜
トーキング・ヘッズがこのアルバムを出して、1980年代は始まったのだ。
高校2年とか3年のころ、音楽好きな友人がこの作品を絶賛していたっけ。


私がよく聴いたのは、それから約10年経ってからだった。
1989年の11月か12月に発売された
雑誌『サウンド&レコーディング マガジン』で、
「私が選ぶ80年代の名作10本」というような特集があった。
大貫妙子さんが選者をされていて、トーキング・ヘッズを2作品
たしか『Remain in Light』『Stop Making Sense』を選ばれていたと思う。


ちょうどその頃、新潮文庫渋谷陽一『ロック進化論』で、
大貫さんと渋谷さんが対談されていて、トーキング・ヘッズを
認める大貫さんと認めない渋谷さんとのやりとりが面白くて、
僕もちゃんと聴いておかなくちゃなあと思ったんだ。たしか。


80年代初頭は、それまで欧米のポップ・カルチャーだった
ロック・ミュージックに、アフロのリズムをONすることが、
新鮮だったのだと思う。順列・組み合わせでプラス・アルファを生み出す
天才が、このころトーキング・ヘッズをプロデュースした
ブライアン・イーノであり、日本では細野晴臣さんなんだと思う。


約10年後にトーキング・ヘッズをかじった僕にとって、
音はもちろん、アートが印象的だった。
ちょうど広告の世界に入ったころであり、
まず『Remain in Light』のジャケットはカッコイイと思った。
80年代を象徴するビジュアルだと思う。
それから、映像作品『Stop Making Sense』のカッコよさと言ったら…。
ライヴ中の床に映る影を追うシーンがとても印象に残っている。
こんな映像を作りたいと思った。


「カッコつけろ!」
「知的たれ!」
トーキング・ヘッズの音楽や映像に触れるたび、
こう言われている気がする。
「インテリ臭さがイヤだ!」と毛嫌いする人もいるけれど、
僕にとってはニューヨークのSOHOとかあの辺りのカルチャーの匂いを
運んでくれる存在だ。


ライヴは1F立見席だった。終盤になって、1F後部中央に位置する
PAの後ろでステージを観ることができることに気づき移動した。
フェンスがあったけれど…。いや、左右のセンターから
フェンス越しにステージを眺めると、白づくめで構成されたメンバーや
ダンサーが計算された動きを見せていた。
「パフォーマンス」、
80年代から新たな意味を持って使われ出した言葉だと思うが、
ローリー・アンダーソンやこのトーキング・ヘッズ
ライヴ・パフォーマンスから生まれた言葉なんじゃなかったっけ?


こんな思いに耽りながら過ごした2時間弱のライヴ。
今の僕にとっては貴重な文化の時間だった。