ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

22年後も-ing。

tinpan19732009-01-12

晦日ブルーノート東京で、パット・メセニーLiveだった。
今月末はビルボード東京で、渡辺香津美吉田美奈子Liveに行く。


パット・メセニー渡辺香津美吉田美奈子
この3アーティストは私にとって、22年前のある夏の日でつながっている。
才能と能力にあふれた3つの個性が、私の中で偶然に出会ったのだ。


1987年8月30日日曜日。ようみうりランドEASTで、
PIT INN開店10周年スペシャル・ライヴが開催された。
(年末の大掃除でこの時のパンフが出て来たので正確な日付が記せる)
新宿と六本木に当時存在したジャズ・フュージョン系のライヴ・ハウスの
10周年を記念して、このライヴ・ハウスによく出演していた音楽家
国内外問わず終結、野外ライヴを行った。


このライヴの目玉は、KYLYNバンドの7年ぶりこの日限りの再結成だった。
数日前の夕刊でこの再結成を知り、すぐさま友人に電話して
いっしょに行くことにした。


KYLYN。
坂本龍一渡辺香津美矢野顕子小原礼村上“ポンタ”秀一
ペッカー、清水靖晃向井滋春本多俊之…。
名前を列記しただけでもその凄さがわかる、
79〜80年に活動した伝説のユニット。
1枚のスタジオ録音と、1枚(2枚組)のライヴ盤を残しただけ。
当時、高校生だった私は、YMO坂本龍一と、
そのYMOの第一回ワールド・ツアーに参加したり、
日立のCMで「UNICORN」というカッコイイ曲を弾いていた
天才ギタリスト・渡辺香津美とがいっしょに作ったYMO以外のバンド
というような認識で、興味深く聴いたものだ。
YMOはテクノだったけれど、KYLYNはジャズ・フュージョンっぽかったので
どちらかというとKYLYNのほうが好きだったと思う。



当然の如くKYLYNは、このライヴの大トリとして最後に登場した。
当然の如く感動した。
夏の終わりのすっかり陽が落ちた頃に聴く「I’ll Be There」など、
無性に切なく胸に響いた。


ただ、この日もっと感動したのが、ちょうど陽が暮れる頃に
富樫春生さんとのデュオで登場した吉田美奈子さんだったのだ。
「Morning Prayer」(「Back in Town」じゃなかったはず)
「Liberty」「Christmas Tree」の三曲を歌ってくれた。
ピアノと歌だけなのに、会場の空気を一変させた。
ヤラレタ! 歌の力ってこんなに大きいのかと思った。
美奈子さんの声を生で聴いたのは、この時が初めてだった。
以来、大ファンになった。


この日、他にもオマー・ハキムやナベサダなど
ジャズ・フュージョン界の大御所たちが登場した。
重鎮たちのプレイを楽しみつつ、野外ライヴならではの
バンドとバンドが入れ替わるときに会場で流れていた音楽に耳を奪われた。


当時、あまり聴いたことのない類のフュージョンだった。
洗練とアメリカの土の匂いを感じた音楽だった。
後日、友人が調べて教えてくれた。流れていたのは
パット・メセニーの当時最新作『Still Life』だった。
これ以降、パット・メセニーのアルバムを機会あるごとに揃えて行った。


この夏の終わりの野外ライヴから20年以上が経過した。
この時私の心を奪ったアーティストたちは、
今尚現在進行形の音楽を私に届けてくれている。
それは、かけがえのない幸せな出来事だと改めて思う。