ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

奥行と時間。

tinpan19732009-01-04

生まれて初めて、花を生けた。


六本木のとある商業ビルで昨日、
来場者に生け花のデモンストレーションをしてもらう催しがあり、
知人がインストラクターをやるというのでチャレンジしたのだ。


松、梅、柳、ナンテン…。
お正月にふさわしい素材が置かれてあり、自由に生けて良いとの事。
二つの四角い枡のようなものに生けるので、
基本はシンメトリーな世界を構築したかった。
知人にいろいろ教えてもらい、何とか出来上がった。
いつもと違う脳ミソを使った気がした。


仕事で、グラフィック・デザインの世界は身近に存在するため、
平面に要素をレイアウトするというのは、何となくわかるようになった。
二次元の世界で、疎と密の関係をどう作り、足し算と引き算をどう行い、
どんなキモチいい世界をつくり上げるか? そんな作業のような気がする。


生け花は三次元だった。タテ×ヨコの平面でなく「×奥行」が存在した。
その塩梅がよくわからなかった。ちょっと違和感を覚えた。
僕は三次元の世界が苦手なのかも知れない。


初めてラジオCMのコピーを書いたとき、テレビCMのコンテを書いたとき、
抱いた違和感と似ているような気がした。
どちらも「×時間」の三次元の世界だと思う。
時間をデザインすること、どうもこれが傲慢な気がしてイヤなのだ。
相手の20秒なり、15秒なりを強制的に奪い取る作業に思えて…。
(実際にはそう簡単に時間を奪われるほど、生活者はヤワじゃないのだが)
グラフィック広告も読み理解するのに時間は必要だが、
相手に届くか否かという意味では、瞬間のインパクトが勝負である。


音楽も、時間をデザインする作業である。
優秀な音楽家に私が憧れるのは、
たとえばポップ・ミュージックなら一曲5分ぐらいで、
私たちをイマジネーションの世界へ連れて行ってくれるから。
時間を奪うのでなく、限られた時間の中で夢や希望を与えてくれる。


年末、大掃除をした。
本棚の整理をしていたとき、FMラジオを流していた。
「ありがとう特集」とかいって、今年一年お世話になった人やモノへの
エピソードを紹介して、その縁の曲をかけるようなプログラムだった。


つまんないバラードが次々と流れた。
甘っちょろいメロディー、ありがちなコード進行、
どの曲も似たり寄ったりのアレンジ…。
「なんでこんな番組を聞いているんだ?」
本の整理に集中して気づかなかったけれど、好きなCDを聴けばいいんだ
という当たり前のことを思い出した。
メロディー、コード、アレンジ…。このラジオ番組で流れた曲たちとは
対極のものが聴きたくて、スティーリー・ダンターンテーブルに乗せた。


今年もこのように、自分の毎日にある音楽を自分のペースで綴って行くとして、
自分の毎日に今までにない「奥行」を与えてみたい、
自分にふさわしい「時間のデザイン」法を考えてみたい
と思い始めている。