ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

恋する「異議の申し立て方」。

tinpan19732008-12-12

先週はコンサートをたくさん聴きに行った。
今週は講演会をたくさん聴きに行っている。


講演会、仕事絡みである。私は広告界の端っこ(SIDEWAY)に
棲息しており、今週は二日連続で講演会を聴講した。
ひとつは、著名広告クリエイターと著名放送作家の対談。
もうひとつは、新進気鋭コミュニケーション・デザイナーと
新進気鋭建築家の対談。


どちらも面白かったが、特に新進気鋭のお二方の対談が興味深かった。
この建築家のお名前は、中村拓志氏。
NHKトップランナー』やTBS『情熱大陸』にもご出演されているので、
ご存じの人も多いはずだ。とにかくお話が面白かった。
対談が終わって即、書店へ走り著作『恋する建築』を買い求めた。


「巨匠スケッチによる“上から目線”の建築でなく、
 内側からつくっていきたい」
「最後に余白をつくる」
「森は、単なる保存の対象ではない。昔の“里山”のように
 森の英知をどう享受していくかが大切だと思う」
「環境問題と資本主義との交点を探す」


興味深い発言が次々と飛び出した。
落ち着いた口調で鋭いことをおっしゃる。
世の中に対する「異議の申し立て方」が上手いのだと思った。
私は、とにかく、カルチャー分野の人に対して、
「異議の申し立て方」が上手いと思われる人を
好きになる傾向があると思った。


こうしたお話を伺っていると、いつでも私は20代の自分に戻れる。
カルチャー分野への好奇心があって、
でも、どれも齧るだけで、特化して究めようという気概も根気もなかった。
ただ聴いているだけで気持ちが良くなって、
自分が研ぎ澄まされていく気がしていた。


考えてみれば、中村拓志氏は私より年下なのである。10歳以上も…。
いや、しかし、年齢は関係ないのだろう。
Web等の進化により、情報を手軽に検索し取り出せる時代、
過去の経験知を効率的に吸収することができるようになった時代、
「以前ほど、年齢は大きな意味を持たなくなった」
と、講演会の中で中村氏も話されていたと思う。


そういえば、このお二人も私より年下なのであるが…、
キリンジの音楽に対して抱くリスペクトと同じような気持ちを
中村拓志氏のお話と著作に感じた。
キリンジも、世の中の主流である音楽シーンに対して、
独自の切り口と完成度で異議を申し立てていると思う。


「運をモノにするにはどうすればいいでしょう?」
セミナーの最後に参加者が質問した。
「自分に自信を持つことと、人との出会いを大事にすることだと思います」。
至極シンプルな答えを、たまらなく奥深く感じた、ある日の午後だった。