ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

まほろばの国の陽気な時報。

tinpan19732008-10-07

週末、米沢へ。
芋煮というこのエリア特有の屋外料理のイベントと、
ある酒蔵の収穫祭に参加させていただいた。
大好きな武将・上杉謙信ゆかりの史跡を訪ねることもできた。


本格的な紅葉にはちょっと早かった。
特産物ラ・フランスの旬にもちょっと早かった。
けれど、このちょい早いタイミングが、
仕事や人生の諸事に遅れ気味の私には有り難い
と、思ったりした。


たくさん食べた。たくさん飲んだ。
ついには、胃が根を上げてしまったほど。
8人もの大人数での旅。新幹線の席を向かい合わせ、車中から飲み話す旅で、
着いてすぐの芋煮、夜の温泉旅館での酒盛り、翌日昼の酒蔵での宴と、
胃と肝臓がル・マン24時間レースに参加しているようだった。
肝臓は何とか耐えられたが、胃がついにリタイアしてしまった感じだ。


帰りは、日本酒やらワインやらで荷物が重くなることがわかり切っていたので、
少しでも荷物を無くすため、この旅にはiPodを持って行かなかった。
音楽は頭をよぎるメロディーに任せ口ずさんでいた。


温泉宿から朝、紅葉が始まった山と川を眺め、
口ずさんだのはキャロル・キング「Natural Woman」だった。
移動のクルマの中で広い道、広がる田園風景を眺めながら、
ドゥービー・ブラザーズ「Listen To The Music」を口ずさんだ。
乾いた空気の中、スケールの大きな自然を前にすると、
どうも私の脳裏にはアメリカン・ミュージックが流れて来るようだ。


印象的だったのが、日曜日の朝。
米沢駅で電車を待っていた。発車までしばらく時間があり、
数人で駅のお土産店を覘いていた。


♪♪♪〜
軽快な電子音が聞こえて来た。
ルイ・アームストロングでお馴染みの
「On The Sunny Side Of Street」だった。
思いがけずいい曲に出逢った。気分やシチュエーションに合っていると思った。
「誰か、電話、鳴ってるよ?」
誰かのケータイの着信音だと思った。しかし、皆、首をかしげる
音の元を追ってみると、土産店の時計の朝9時の時報だった。


POPで洒落ていると思った。
この町がますます好きになった。この旅がますます楽しくなった。


この「On The Sunny Side Of Street」は、私にとっては
朝のオンガクだ。初めて聴いたのは80年代だったが、
ほんの数年前にマイ・モーニング・ミュージックとして位置づけられたのだ。


2006年かな?のある朝、身支度をしていたら、
テレビから聞き覚えのある陽気なメロディーが流れて来たのだ。
番組は宮崎あおいさん主演のNHK朝ドラ。
朝ドラとルイ・アームストロング? そのミス・マッチが信じられなかった
けれど、ドラマは面白く、宮崎あおいさんは上手く、
他のキャストもすばらしかった。
生まれて初めて、NHK朝ドラを半年間ほとんど観つづけた。


ドラマは面白かった
が、終わりがちょっとシミジミしすぎた気がした。
宮崎さんの役柄に勝手に矢野顕子さんを投影していたので、
もっと奔放に生き、音楽家としてサクセスしてほしかった。


などということも思い出した日曜日の朝だった。
SIDEWAYもいいけれど、SUNNY SIDEを歩いて行こう。
そんなことも思った。やがて、発車の時間になった。