ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

理由が、わかった。つながった。

tinpan19732008-06-26

真山仁『マグマ』を読み終えた。
またもや、素晴らしい作品だった。


当作品の内容についてはひとまず置いておいて、
「私がなぜ真山作品に惹かれるか」
この本を読んで、また先日あるテレビ番組を見て、
理解できた気がしたので、それを先に記したい。


NHK教育テレビ知るを楽しむ」で、
横溝正史さんを今シリーズで紹介している。
その語り部真山仁さんである。
横溝正史真山仁。ナルホド。自分の中でつながった。
人間を見つめる視線の鋭さと優しさが、このお二方は似ていると思う。
とくに罪を犯した人への視線が客観性に富んでいる。


そんなことを思いながら、この『マグマ』を読んでいると、
154ページにそれを裏付けるエピソードが、主人公の会話の中に
登場してきた。
この主人公が作品の中でP.D.ジェイムズ『女には向かない職業』を読んでいる。
主人公は英国ミステリーが好きらしい。
「英国ミステリーの豊かな叙情と勧善懲悪じゃないところ」
が好きな理由らしい。
「犯罪とは、ボタンの掛け違いみたいなもので、
時として被害者が加害者になる」
「英国ミステリーを読むたびに、人の危うさや哀しさを考えさせられる」
と言っている。また別の人は、P.D.ジェイムズの作品は
「人間の“原罪”を問うている」
とも語っている。


これが、そのまま、真山作品に、作家・真山仁のめざすものに
当てはまる気がする。私が、横溝作品を、真山作品を、
好きな理由もこれなんだと思った。


豊かな叙情、人の危うさや哀しさ、原罪…。
音楽もこれなのかな?
キリンジ吉田美奈子さんや松本隆さんやユーミンの詞に描かれる
“人間”に、私はこんなことを求め感じているのかも知れない。


『マグマ』では、時事問題として
地熱発電についていろいろ知ることができました。
原発や、政治や、利権や、石油価格の高騰や、
世界情勢や、エコロジーについても。


ラブロック「ガイア仮説」が物語の中で重要な役割を果たしていて、
私はこの学説、1980年代の半ば、松岡正剛さんの工作舎の本や、
それこそ細野晴臣さんがインタビューか何かで語っていらして、
興味を持って調べたりしたことを思い出しました。


真山仁さんと横溝正史さんがつながって、そしてさらに
ここに今まで記してきた音楽がつながってきたような気がして
ちょっとうれしい。こんど、ちょっと英国ミステリーをかじってみることに
しよう。


しかし、それにしても、見事だ。「マグマ」。
読み終えたこの爽快感と幸福感は、ここに記しただけじゃ鎮まらない。
ワインでも飲みながら、あの人に話しつづけることにしよう。