ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

11年遅れの愛聴盤。

tinpan19732008-06-10

前回の書き込みからちょっと
時間が経ってしまったので、
今日はそうタイミングの話。


食品に賞味期限があるように、
音楽にも賞味期限があると思う。
そう、特に、新譜は。
新鮮なうちに繰り返し聴かないと、愛聴盤になるのは難しい。
そんなことを、11年前の今ごろ感じた。


1997年の梅雨時、大貫妙子『Lucy』が発売された。
待ってましたの坂本龍一アレンジ!
アルバム『Copine』以来だから、当時で12年ぶり。
雑誌『Esquire』等でお二方の対談が掲載されたり、
プロモーションにも心躍った。


ジャケット・デザインはサイトウマコト氏。
アート・ワークも完璧。
CDを買って聴き出すと、もう1曲目「Lulu」のイントロから、
シビレた。キモチよくなった。
カンペキに愛聴盤になる、そんな流れだった。


だが、そうならなかった。
当時、会社で私の背中合わせに座っていたアート・ディレクターの人に
買ったばかりでフルに2回聴いたかぐらいの『Lucy』を貸してしまったのだ。
私が持つ他の全大貫作品とともに。


このアルバムのサイトウマコト氏だったり、
ヨーロッパ路線のときの奥村靭正氏だったり、
大御所のアート・ワークや坂本龍一氏アレンジあたりから
大貫妙子さんに興味を持たれたそうで、それならばと
私の全作品をお貸ししたのだ。すぐ返していただける
ということだったので、買ったばかりの『Lucy』までも。


ところが、『Lucy』が私の手元に返ってきたのは、
その年の夏が終わるころだったと思う。
あの夏、私は忙しかった。
あの人も忙しかった。撮影やロケですれ違いが多く、
会社で顔を会わす機会が少なくなった。
大貫さんを聴かない夏だった。


空梅雨だったのかな?
ジメジメが続くと、大貫さんの声が、
色彩都市」や「光のカーニバル」を聴かないと、
イライラが募るのに、そんな記憶がないということは…。
そんな気持ちになる余裕がないぐらい追い立てられていたのかも知れない。


今朝、ふと思い立って、アルバム『Lucy』を最初から聴きながら、
会社へ向かった。改めてフルに聴いて、この完成度の高さはどうだ!
大貫さんの90年代の作品の最高傑作だと思う。
大貫さんが今の私の年齢ぐらいで創り出した作品。
この時代、この二人、この年齢でないと出せない、味がある。
成熟したクリエイティブとは、こういうことを言うのではないか。
ヨ〜シ、梅雨時に聴き続け、11年遅れの愛聴盤にしてやる!
と思った朝だった。