ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

チューチュー・ガタゴトwithキリンジNew Album

tinpan19732008-03-22

水曜日、法事のため、
渋谷から湘南新宿ラインに乗り、
高崎方面へ1時間半ほど電車に揺られた。


発売されたばかりのキリンジの新譜を初めて聴く。
ちょうどいい。貴重な時間だ。そう思い、amazonから届いたばかりの
新譜をリッピングした。電車には歌詞カードを持ち込んだ。


昨年、何ヶ月も連続でシングル配信した楽曲をコンパイルしたせいか、
聴いていてアルバムとしてのトータリティをあまり感じなかった。
いや、今作はそれを狙っていないのだろう。『7 – seven–』という
無機質なアルバム・タイトルもそれを物語っている気がした。


とはいえ、一曲一曲の多彩さと完成度はさすが。
「イージーだ!」「安っぽい!」最近のチャートを賑わす曲の多くに
抱いていまう想いを全く感じさせないところが、私がキリンジを好きな
理由なのだと思う。


歌詞カードを見始める前に終わった最初の2曲が、印象的だった。
「家路」は終電の終着駅が舞台。
“キャベツ畑”という言葉にハッとして、
“独り言呟いたなら 詠み人知らずの歌になる” というフレーズに
グッときた。小雨も降っているようだ。刹那い。果敢ない。
そう。でも、繰り返す今日の先に明日がある。


「朝焼けは雨のきざし」は、
タイトルからして諺の引用で、「東の雲は紅く」というフレーズに
万葉の香りも感じて(先日奈良に行ったもんで…)、好きな曲だ。
とはいえ、一番は「東・朝焼け・運命に抗う」、
二番は「西・夕焼け・運命に従う」と対比させている。
うん、「春は曙〜、秋は夕暮れ〜」に負けていない。
21世紀の『枕草子』と呼ぶことにしよう。
東と西の使い方が、どこか細野晴臣「四面道歌」のようでもあり…。
あとは、朝早く愛しい人を訪ねるあたりは、
荒井由実「雨の街を」、松任谷由実「A Happy New Year」のようでもあり、
しかし、夕暮れの描写は、
荒井由実「翳りゆく部屋」とも吉田美奈子「Back in Town」とも全く違う。
喪失感がない。当たり前か。
君がいれば雨の日も晴れの日もという歌なんだから。


詞を追っていて、当アルバム中最も傑作と感じたのは、
「タンダム・ラナウェイ(tandem runaways)」だ。
ブログ名・ペンネームに「SIDEWAYS」と謳っていることもあり、
まぁ、もとから“道”好きなせいもあるけれど…。


“亡くした季節見つかるルートはあるか”
“いい歳になっても旅慣れたふり続ける僕は迷子”
“人生はすべてが手遅れのようで始まったばかり”…
もう目からウロコの言葉のオンパレード。
エンディング部分のラブ・シーンの描写も、
巷のショーもない小説の数百倍心に響く。


キリンジの作品を、曲と詞ほぼ同タイミングで聴いた作品は
初めてだったもので(いつも曲が先。いまだに詞を追ってないのが大半)、
ほとんど詞を中心にした文になってしまった。


それから、ここのところの忙しさと慌しさで、アルバム後半、
ちょうどキリンジのご出身地・坂戸あたりを電車が通過したとき、
私は眠りに誘われウトウトと舟を漕ぎ出したことも記しておこう。
チューチューガタゴト…、もう2008か。