ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

背伸びした街。

tinpan19732008-03-14

ティン・パン・アレーを訪ねて】第15回


約1年ぶりに仕事で音響ハウスを訪れる。


この間、HASYMOライディーン」や、
吉田美奈子&河合代介「ガラスの林檎」や、
大貫妙子1st&2ndのNewミックスが行われたり、
相変わらずティン・パン系の聖堂である。


自分が行くスタジオNoのチェックはもちろん、
音楽のレコーディングや唄入れで使用されるスタジオの名義をチェックした。
とりあえず私の好きなアーティストのレコーディングは行われていないようだった。


夜は久々に自由が丘で飲む。
学生時代の仲間に、自由が丘にいい店があるからということで呼び出されたのだ。


なるほど、いい店だった。
ワインが好きな私にとって、自由が丘はいいワイン・バーが少なくて
閉口していたのだが、このBarはワイン専門のバーではないのに、
モンテプルチアーノやグルナッシュ100%のワインが置いてあったりして、
おもしろかった。値段もリーズナブルだった。
家も近いのですっかりリラックスした。酔っ払った。


店を出て、旧友と通りを歩く。
昔、大音量のスピーカーでJAZZを聴かせる地下の店「チャーリー・ブラウン」が
あった前を通りがかる。今は和食の店になっていた。


そういえば…。
「グランド・ファザーズ」というロック喫茶も、無くなった。
「レイラ」はまだあるらしい。
と、ひとしきり80年代半ばの音楽が流れる自由が丘のお店談義をしながら歩いた。


80年代半ば、20代になったばかりで、
思い切り背伸びしてカッコつけて、でもぜんぜんサマにならなかったころ。
自由が丘を歩くと、ティン・パン系の音楽は
自分の中にあまり聴こえてこない。


聴こえてくるのは、
耳障りがやけにいいAORだったり、
クラプトンとかのブルース(ブルーズじゃない)だったり、
クルセイダーズとかのクロス・オーバー(フュージョンでない)だったりする。


等身大、皮膚感覚というよりは、
背伸び、カッコつけ…。
そんな街をようやく自然体で歩けるようになったかと少しうれしく、
でもそれはトシをとるとイコールだと少しかなしく、
悲喜こもごもを感じた春の夜だった。