ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

都市とカラス。

tinpan19732008-02-26

吉田美奈子さんの音楽は、都市の音楽だ。
ティーン・エイジャーの女子高校生、
泥酔したドランカー…。
こういった人たちを素材にして、都市とそこで生きる人間を
鋭い視線で見つめ描く。


女子高校生については、前日ざっと記したが、
少女のもつ危うさ・一途さが美しく・哀しく描かれていると思う。
ドランカーについては
「ALCOHOLLER」(『LIGHT’N UP』1982年)
「HIPHOPNEOHIPPIE-DUMB-DAMN-TOWN
〜Continued from ALCOHOLLER〜」(『KEY』1996年)
といった楽曲で、酔った人びとの刹那さ・儚さをFunkyにHippieに描く。


そして、もうひとつ、都市の象徴として、
美奈子さんが視線を投げかける対象は、カラスだ。


「鼻突く残骸に塗れている〜」
「偉ぶる烏の群れ〜」
2002年9月11日(あのセプテンバー・イレブンの一年後だ)、
ユニバーサル・ビクター(旧MCAビクター)契約終了後約5年ぶりに
自身のオリジナル楽曲を、Avex ioからまずシングルをリリースした。
そのシングル発売された曲が「Temptation」。
夜明けの街でゴミをつつくカラスを題材にした曲だ。


この5年間の空白の間にLiveで何度か耳にした、
ビートやリズムがカッコイイ、バンド映えする楽曲だ。
ただ、ただ、ただ…。私はカラスが嫌いだ!
怨みを持っている。忘れもしない。この1年前の2001年の6月某日。
カラスに頭を突かれたのだ。朝、銀座四丁目交差点から
ちょっと入った道を歩いていると…。突然!


月曜日の朝6時ぐらいのかなり早い時間だった。
この日銀座某所で某金融機関がオープンするイベントで、
その準備のため前日から泊り込んで準備をしていて、
この日も朝早く会場に向かっていたのだった。
黒づくめの格好をしていた。前日海に行って顔も灼けていた。
「同類だと思われたんじゃないか」
仕事仲間は笑ったけれど、頭からは血が出て…、
イベント終了後念のため病院に行ったほどだったのだ。


そういうわけで、カラスへの嫌悪感をそれ以降ずっと持ち続けたけれど、
二年前かな?のLiveで「CROW」を聴いて、
何といい曲だろうと思いを新たにした。
1997年、ユニバーサル・ビクター(旧MCAビクター)最後のアルバム
「SPELL」収録。発売当初はアルバムの流れの中の一曲という
位置づけの曲だったけれど、この2006年(たぶん)のLiveで聴いて、
その無常観にヤラレタ!感じ。
♪街は誰一人認識てはいないだろう だから孤独でも生きられる〜
とびきりの切なさ・刹那さ…。諸行無常の響きを感じる。


そういえば、ティン・パン・アレーが1975年に日本全国を廻った
“ファースト&ラスト・ツアー”。このアンコール・ナンバーが、
小坂忠さんの「からす」で、ツアー・メンバーだった美奈子さんも
この曲にコーラス参加していたと思う。


都市とカラス…。必要悪というか様式美というか、
なくてはならないもの、切っては切れない関係のようだ。


という文章を明け方6時に書く。
もうすぐ夜が明ける。
今日はゴミ収集日。ゴミを出そう。
カラス! 荒らすんじゃないぞ!