ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

通勤電車の逃避行。

tinpan19732008-02-17

ちょっとご無沙汰してしまった。
ちょっとした仕事の山が押し寄せて、
それはこれまで20年なりの社会人生活の中で、
ベスト50に入るか入らないかのものだけれど…。


いや、ベスト30ぐらいには入るのかも知れない。
ただ、もう、自分のペースは乱されないというか、
どんなに仕事が忙しく慌しく追いかけてきても、
一定の距離の置き方を覚えたからだいじょうぶ。


この一週間、心の平穏に役立ったのは、
朝、自宅から会社まで、一時間弱の通勤の間に
聴いた音楽はもちろん(今週はピーター・ガブリエルをよく聴きました)、
奥田英朗さんの小説がいい気分転換になりました。


文庫本の『空中ブランコ』『イン・ザ・プール』。
どちらも短編集で、最寄り駅から読み始めて、一短編を読み終わるころ
ちょうど会社に着くという、そのペースも心地よかった。


先入観として、重松清さんとかリリー・フランキーさんとかと
同じ匂いを感じていたのですが、読んでみたらゼンゼンちがいました。
「ひとつの文が短い」ところが好きです。この人の。
テンポよく読み進められる。経歴をザッと見てみたら、
元コピーライターであられたそうで…。ナルホドと思いました。


この太った神経科医のシリーズ、スルドク時代を映し出していると思います。
ケータイ中毒の高校生、運動不足の中年男性、
サクセスを夢見るコンパニオン、スランプの女流作家、
逆玉の悲哀、バツイチの憂鬱…。
いるよなこういうヤツと思わせる人間像が、リアリスティックに描かれる。


み〜んな病んでる現代人、
現代社会の一段面をヒジョーにいきいきと描き出していて、
その描き方で軽快で痛快。そこが好きなのだと思う。


朝、混んだ電車の中で読みながらクスッと笑ったり、ちょっとジ〜ンとしたり、
つかの間現実を忘れてマインド・トリップする。
ちょうど一短編を読み終わるころ、会社がある駅に着いて、
一日が始まる。現実が待っている。


昨今の映画やテレビをめぐる状況から
奥田英朗作品、映画化、テレビ化いろいろされているんだろうなと思ったら、
ホントにいろいろあるらしい…。
時間ができたらWebで調べたりレンタル・ビデオ屋で探したりしょうか
と思うが、「活字のほうがイイ」と思う気がする。かなりの確率で。