ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

ミヤベさんとホソノさんのエキゾティズム。

tinpan19732008-01-05


宮部みゆき『日暮らし』上下巻、読了。
昨年末、城東地区・上野の東京文化会館へ、
室町期の城東地区・隅田川を描いた
松本隆×千住明のオペラ『隅田川』を観に行った頃から読み始め、
師走の慌しさでなかなかページが進まなかったが、
この年末年始の休みで一気に読み終えた。


江戸時代の(たぶん)後期の八丁堀の長屋を舞台にした小説。
町役人・平四郎が殺人事件や難事件を解決していくストーリーだから、
ミステリー小説のカテゴリーに入るのだろう。
今さらながら、宮部さんの筆力に脱帽する。
人間の描き方が上手すぎる。季節や風景のさりげない描写もさすがだ。
忘れないうちに、最も心動かされたフレーズをメモしておこう。


 みんな毎日をこんなふうに暮らせたらいいのになぁ。
 でも、そうはいかねえんだよなぁ。
 一日、一日、積み上げるように。
 てめえで進んでいかないと。おまんまをいただいてさ。
 みんなそうやって日暮らしだ。


深川や日本橋などの地名がバンバン出てくる。
「伊豆栄」等、今も存在するお店の名も出てきたりする。
芋洗坂も重要なロケーションとして登場する。
今でこそ六本木交差点から麻布十番方面へ降りていく坂として
人通りは多いが、この時代だとかなり僻地として描かれる。
やはり、この時代の中心地は、今の中央区から江東区台東区
かけての城東地区(江戸城の東のエリア)なんだなと改めて思った。



引き続き、この『日暮らし』の姉妹作品である『ぼんくら』を
読み始めたのだが、この時代の地図を傍らに置きながら読み進むと、
楽しさが増す気がする。


音楽は何がいいかな。
モーツァルトの10枚組を買ったばかりなので、
『日暮らし』はそれを聴きながら読むことが多かったけど、
『ぼんくら』は、やっぱり、そうだな。ホソノさんかな。
「Pom Pom蒸気」とか「エキゾティカ・ララバイ」とかハマる気がする。


細野晴臣泰安洋行』、矢野顕子『ジャパニーズ・ガール』、
どちらも1976年に世に出た“エキゾティック・ジャパン”の二大傑作。
エキゾティズムの観点から日本を見つめ描き、
欧米の模倣でなく日本らしさが息づいている。
つまりそれは、海外の人に「これが、日本のポップ・ミュージックです」と
紹介するのに最適な作品であるということ。


あっ、そういえば、ホソノさんの最新作『FLYING SAUCER 1947』では
「Pom Pom蒸気」カントリー・バージョンが聴けるんだっけ。


明治以降の日本に登場した隅田川を走る蒸気船の歌を、
モボ・モガの歌かと思ったら、50年代の若者をイメージしたらしい)
戦争中1940年代の米国のカントリー・ミュージックの手法で
演奏した音楽を聴きながら、
江戸時代の市井の人びとの暮らしを描いた小説を読む。
う〜ん、かなりエキゾティックだ。