ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

屋根の上から見えたもの。

tinpan19732007-11-17

火曜日のキャロル・キングLiveでは、
数々の名曲を披露してくれた。


「It’s too late」「So Far Away」「You’ve got a friend」…。
一曲一曲にグッときたけれど、
いちばん感動したのは「UP ON THE ROOF」。


音源が94年に発売されたライヴ・アルバムしかなくて、
しかも、そのアルバムには歌詞カードがなくて、
「いやなことがあると屋根に登る」現状からの脱出願望を歌った曲だとは
昨日までわからなかった。


そういえば、と思い、家のCD棚をもう一度チェックして、
サンプルでいただいた21世紀になってから発売された英国編集ベストを
見つけ出したのだ。あれは、レコード会社の知人からいただいたものだから、
日本語対訳が付いているはず。ベストだから当然「UP ON THE ROOF」も
収録されているはず。
あった。あった。「UP ON THE ROOF」も入っている。
歌詞がある。日本語訳も付いている。


ローラ・ニーロがカヴァーしんたんだよな。この曲。
♪屋根に登ると空が近いよ〜
荒井由実ひこうき雲』収録の「紙ヒコーキ」の詞にも影響を与えたり
したのかもしれないな。


結成直後、まだオリジナル曲が少なかったシュガー・ベイブ
大貫妙子ヴォーカルでこの「UP ON THE ROOF」を
Liveでよくカヴァーしていたらしい。
(聴いてみたいな。ター坊の声で。「UP ON THE ROOF」)
そういえば「蜃気楼の街」で表現された、
「ここではないどこかへ行きたい」脱出願望は、
「UP ON THE ROOF」の世界に近いのかも知れない。


60年代、キャロルが、職業作家として数多くの曲を書いていた時代。
NYティン・パン・アレーの狭い一室で、来る日も来る日も曲づくりに励んだ。
(実際に、あの通りに面した部屋で曲を作ったかどうかはわからない。
 私の妄想が入っています)
そんな毎日から生まれた曲だと、Liveでいっしょっだった知人に聞いて、
この曲がますます好きになった。


屋根の上から、何が見えるのだろう?


僕には、なぜか東京・谷中の風景が見えた。
谷中生姜の由来の地でもある、坂が多く、
江戸城の北の鬼門の方角にあった寛永寺の近くの、
文京区と台東区と北区が入り組んだ界隈。


屋根に登っているのは、まだ10代の浅田美代子さん。
ギターを弾いて歌っている。
そう、久世光彦氏演出のTVドラマ『寺内貫太郎一家』の世界だ。


飛んで行ってしまった「赤い風船」も、
屋根の上に輝いた「しあわせの一番星」も、
「UP ON THE ROOF」の世界にインスパイアされて
描かれたんですよね? 安井かずみさん。


70年代はじめ、感受性が豊かで鋭い女性クリエイターの多くに、
キャロル・キングのこの楽曲は多大な影響を与えたのではないだろうか。