ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

細野晴臣シェフの多品目・多国籍料理たち。

tinpan19732007-10-08

この連休、久々にゆっくりできた。
9月はドイツに行ったり、
帰ってからも慌しかったりで、
胸に湿疹ができたりとあきらかに
体が悲鳴を上げ始めていたので、
とにかく食を何とかしようと思った。


大きくて赤いトマトをいただいた。
冷蔵庫にナスがあった。これとアスパラとタマネギ、エリンギなどを
炒めようと思った。今シーズン最後のラタトゥイユ?あるいはカポナータ
いや、ドイツで洋風のものはそこそこ食べたことだし、
たしかいただきもののホタテの缶詰があったから、
オイスター・ソースやゴマ油を使って中華っぽい味付けにしよう。
ということで、作りました。「ホタテと夏野菜のチャイニーズ・チャンプルー」。


翌日、スーパーに行くと、サトイモが美味そうだった。
大根とか冬野菜も旬を迎えたらしくスピリチュアルに並んでいた。
けんちん汁が食べたくなった。
ゴボウとニンジンときのこを数種類いっしょに買った。
料理するとき、いろいろ考えて、油は使わないことにした。
ということで、作りました。「冬野菜のオイルレス味噌スープ」。
(ただの具だくさん味噌汁だ)


夏野菜にグッバイを、冬野菜にウェルカムをした連休だった。
ちょうど米も切れ目だったので、新米を買うことができた。
気候も過ごしやすくなり、よく食べ、よく眠り、体調は確実に上向いた。


自己流の料理を作りながら、
多品目を摂取するため、貰いモノや残りモノや旬のモノを、
炒めたり、煮込んだりしながら。
想いを馳せたのは、細野晴臣氏の
トロピカル三部作ともエキゾティック三部作とも言われる作品群。


料理を作ることと、音楽を作ることは、
実はかなり似ているんじゃないか?と最近思うようになった。
素材があって、それをどう料理し、どう味つけるか。


ぼくがホソノさんの、この三部作に惹かれるのは、
ものすごく品目が多くて、
(リズムひとつとっても、ブギ・ウギあり、カリプソあり、
 スカ・ビギンあり、おっちゃんのリズムあり…)
和洋中なんでもありで、
(沖縄あり、ニューオーリンズあり、上海あり…)
しかも味が旨いからだと思う。
(発想を表現できる技術がある。そんな人たちが演奏している)


あとは、順列・組み合わせの妙。
たとえば、「Chow Chow Dog」(『泰安洋行』収録)の
“チャンキー・ゴスペル”の世界。
明日になれば食べられてしまう食用黒犬の心情を、その涅槃の境地ぶりを
ゴスペル・ミュージックとして歌にしてしまう発想。
あるいは、「ブラック・ピーナッツ」(『泰安洋行』収録)の
風刺ぶり。カリプソというのは本来、風刺の効いた歌詞が特徴だそうで、
当時のニッポンの一大事件「ロッキード事件」を題材にしてしまった。


そういえば、この時期のアルバムはキャッチフレーズからして料理だった。
『TROPICAL DANDY』=“ソイ・ソース・ミュージック”。
エキゾティシズムをもった音楽をアメリカ経由で受け取り、
日本という国で隠し味を加える。
泰安洋行』=“チャンキー・ミュージック”。
ニューオーリンズの“ガンボ”、沖縄の“チャンプルー”に対抗して、
「ゴッタ煮」的な自己流混合文化を、「ちゃんこ鍋」をヒントに
“チャンキー”と表現した。


ネーミングの天才・ホソノさんは、グループの名前だけでなく、
自らが志向した音楽をカテゴライズする言葉を作ることにも
長けていたようだ。


音楽と、料理と、ホソノさん。まだまだ話し足りないので、
つづきはいつか、また。