ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

嵐の夜のジャポニズム。

tinpan19732007-09-05

台風が、関東地方を直撃しそうとのこと。
大したことのないよう願いつつ
今日は台風の歌のお話など。


台風や嵐を歌ったポップ・ミュージックはそこそこあると思うが、
自分でも不思議なほど思い入れがないことに今、気づいた。


はつぴぃえんど(はっぴいえんど)『風街ろまん』(1971年)には
「颱風」があるけれど、iPodにしてから一度もプレイしていないと思うし、
細野晴臣『トロピカル・ダンディ』(1975年)の二曲目「ハリケーン・ドロシー」も、
一曲目「チャタヌガ・チューチュー」ほど聴いていないはず。
(一曲目の吉田美奈子大貫妙子コーラスは時々無性に聴きたくなる)


サディスティック・ミカ・バンド『黒船』(1974年)も
たしか最後から二曲目が「颱風歌」という曲だが、
トータル・アルバムゆえか流れの中でしか聴いたことがない。


山下達郎『MOONGLOW』(1979年)のA面4曲目「Storm」も、
カセット音源で所有していた20代のころ、この4曲目だけを
よく早送りしていた記憶がある。
3曲目「Rainy Walk」のメロディアスさ、5曲目「Funky Flushin’」のファンキーさ
に比べ、このシックな曲調はどこかよそよそしかったのだと思う。


松任谷由実『VOYAGER』(1983年)のB面2曲目「TYPHOON」も、
渋谷陽一氏がラジオ番組でこの曲のもつセクシャルな空気を絶賛していたのを
聞いた覚えがあるが、20歳を過ぎたばかりの私には距離があった。
そういえばユーミンには「さよならハリケーン」(1986年『アラーム・ア・ラ・モード』)
という曲もあって、これは冬、たぶんアルバム発売直後、雪が降り始めた夜、
海に沿った国道134号を走りながら聴く機会があり、妙にマッチした覚えがある。


山下達郎「Storm」(作詩・吉田美奈子)や松任谷由実「TYPHOON」に
共通するのは、ニュアンスには富んでいるが盛り上がらない曲調。
雲行きの怪しさ、生温かい風、不自然に増す湿度…。
何かが起こる不穏さを感じるのだけれど、こういった世界を、
私はポップ・ミュージックにあまり求めないのかも知れない。


これが小説になると、こういった不穏さ漂う世界は大好きになる。
たとえば桐野夏生『OUT』。
それから、数年前の台風の夜、ビデオで観た1974年の映画『日本沈没』。
21年前の夏の終わりから秋に放送されたTBSドラマ『男女七人夏物語』も、
嵐の夜の明石家さんま大竹しのぶ池上季実子の人間模様が素晴らしく
「さすが!鎌田敏夫さん!」と唸ったものだ。
その思いをリピートしたくて、いつぞやの嵐の夜、
ビデオをレンタルして観たことがあった。そういえば。


ここまで書いて、悲しいほどドメスティックなことに気づいた。
そうだよな。大型で強い台風が、どこそこに上陸して、
どこそこでは最大瞬間風速が○○mを超えて、これからの進路は…
とテレビの台風情報に一喜一憂する。
“嵐の夜は、私をジャパニーズにする”。


今日は、ここに上げた楽曲をリストアップして、
iPodで聴きながら帰ることにしよう。