ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

麦の黄金、蕎麦の白。

tinpan19732007-06-11

週末、群馬県をクルマで走った。
梅雨前線による雨でなく、
上空に入り込んだ寒気による雨。
霧雨と豪雨が時間ごとに変化する不思議な天候だった。


絹の糸のような小雨になったとき、
印象的な風景に遭遇した。
小さな道一本を挟んで、左に黄金色が、右に白い色が広がっていた。


黄金色は、麦だった。
6月は麦の収穫時らしい。「麦秋」とはよく言ったもの。
新緑の色味が深まるこの時期の黄金色はインパクトがあった。


あの白い色は?
蕎麦の花だった。微かで、儚げで、素朴だった。
花を愛でるというより実を味わうもの。控えめな可憐さが一面に広がっていた。


見事だった。美しい映像だった。
減速して、思い切りゆっくり走った。
知らなかった、新しい季節の感じ方だった。


数時間後、電車で東京に戻る際、
iPod大貫妙子「四季」(1999年『アトラクシオン』収録)を呼び出して
一曲目に聴いた。


和を感じさせてくれる曲が聴きたかった。
どこかエキゾティックに日本を見つめた曲。
見つめ方やメロディー・アレンジが十年一日の演歌じゃなくて、
たとえば外国の民謡に日本語の歌詞を当てはめた唱歌のような。


大貫さんは定期的にこんな曲を作る。
「美しい人よ」(原曲はたしかスペインだった)もそうだろうし、
「花・ひらく夢」(1990年『NEW MOON』収録)
「野辺」(1985年『Copine』収録)。
1976年デビュ・アルバムの「When I Met The Grey Sky」も、
矢野誠氏アレンジで琴の音が聴こえたりして、
和を感じた。


日本のエキゾティズム=ジャポニズムを描いた
大貫さんの曲は今日の雨のように切なく深い
と思った、梅雨入り前の日曜日だった。