ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

六月の霧靄。

tinpan19732007-06-01

今日から六月。
今年はしっかり五月晴れがあったので、
今日から六月らしく雨の話ができる。


まずは、この曲あたりから。
荒井由実「雨のステイション」。
1975年『COBALT HOUR』に収録された、
美しいメロディー・ラインと
ティン・パン・アレーの抑制のきいた演奏が味わえる曲。


「彼らは技術力はもちろん、表現力がすぐれている」
山下達郎さんがラジオ番組で、ティン・パン・アレーに対して、
こんな発言をされていたのを聞いたことがあるけれど、
この曲もその一例といえるのではないだろうか。


オカズを叩かない林立夫氏のドラム。
ニュアンスに富んだ細野晴臣氏のベース。
歌伴に徹した鈴木茂氏のギター。
控えめな松任谷正隆氏のキーボード。


YMOから“ハズシの美学”を学んだとしたら、
ティン・パン・アレーからは“謙遜の美学”を学んだ気がする。
あるいは、“わび・さび”、“華美じゃない茶室”。
“京都・龍安寺の石庭”あたりが最も言い得ているような…。
個々が変に自己主張せず、全体としてバランスのとれた美を醸す。
さっぱりとして控えめだけれど、潔く深い。


スリー・ディグリーズ「ミッドナイト・トレイン」や
小坂忠『ほうろう』あたりの黒っぽい演奏も好きだけれど、
荒井由実1〜3枚目から色濃く感じられる“抑制”“引き算”が好きだ。


ところで、この「雨のステイション」。
しとしと雨の西立川駅が舞台らしく、何と歌碑まで立っているらしい。


私にとってのこの曲のイメージは、御茶ノ水駅。
江戸城の内堀だったお堀(神田川?)の位置まで低まったホームや
駅舎が味わい深いから?
六月の雨の日に訪れたことが多いから?
そういえば、ツバメを見たこともあったような?
いや、この曲をよく聴いたころ好きだった人が、
その当時毎日通っていた駅だったから?


いろんな理由が複合されて、私の頭の中に
霧や靄がかかったのだろう。