ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

十月と五月は似ている。

tinpan19732007-05-15

大貫妙子『A Slice of Life』も
五月に似合うアルバムだ。


発売は1987年10月で、
ずっと秋の爽やかな空が似合うアルバムだったが、
ある時期から5月が似合うようになった。


あれは、2001年だったろうか?
21世紀になってから記憶が曖昧で
自分の中でクロニクルが整理できず
ひょっとしたら2002年なのかも知れない。
が、2000年12月Tin Panコンサートからそれほど
時間が経っていなかったはずだから、2001年で正しいと思う。
5月にBunkamuraオーチャード・ホールで、
大貫妙子さんのコンサートがあった。


久しぶりのバンド編成。しかも、林立夫沼澤尚のツイン・ドラム、
佐橋佳幸ギターで、新進気鋭(私にとって)のキーボディスト森俊之も参加
という願ってもいない顔ぶれで、有無を云わず駆けつけた。


全くうるさくなく、大貫さんの声をジャマすることなく寄り添うツイン・ドラム。
抑制の効いたバンド・サウンドという印象だった。
「次のアルバムは、ニッポンの、この素敵なミュージシャンたちと作りたい」
と大貫さんはMCで語り、次作『note』は事実そうなった。


このコンサートのアンコールで「人魚と水夫」を歌ってくれた。
それまで『A Slice of Life』というアルバムの三曲目という存在でしかなかった曲が、
このLive以来五月を象徴する楽曲になった。
それくらい新鮮に聴こえた。演奏も良かった。


十月と五月は、気候が似ている。
気温も、そして湿度も。
異なるのは、その先に控える季節が、夏なのか、秋なのかということ。


発売時期と「あなたに似た人」「もういちどトゥイスト」といった
冒頭2曲に顕著な“ロスト・サマー=過ぎ去った夏”のイメージが
アルバム全体を覆っていたけれど、
この2002年5月のLive以降、
“アップカミング・サマー=夏が来る”を感じるアルバムになった。
「人魚と水夫」「木立の中の日々」など、
この時期に聞くとヒジョーに気持ちいい楽曲である。