ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

MB101の行間に、90年代が見える。

tinpan19732006-10-22

5月と6月の雨の日は、私を
80年代半ばの学生時代に連れて行った。
8月の暑い日は、
長い夏休みがあった70年代へ誘った。
このところ続いた10月の晴れの日は…。


どうやら90年代の始めに
タイム・トリップさせてくれるようだ。
私は、社会人3年半にしてコピーライターへ。
先日記したように、F1レーサー
ジャン・アレジの走りとともに、90年代を駆け抜けた。


10月、鈴鹿(今年で契約切れるらしい)、日本グランプリ、アレジ…。
90年代初頭の象徴。
これと並んで、私にとって90年代の始めを想起させてくれるものがある。


それは、「MB101」。
あの頃のF1マシンの名称? イヤ、書体、フォントの名称である。


活字には、明朝体やゴシック体といった種類があって、
その中にもさまざま文字のかたちがある。
MB101は、「モリサワ」という会社のゴシック体の一種。


書体には当然、時代ごとの流行があって、
90年代始め世の中を席捲したのが、この「MB101」だ。
それまでは「写研」の書体が主流だったのだが、
Macintoshによるグラフィックやエディトリアルのデザイン制作への
対応に遅れ、衰えていったのだと思う(たしか)。
MB101は、井上嗣也氏が使い出したという説も聞いたことがある。
時代を代表するアート・ディレクターが使う書体なら、
一気に普及するのも然り。ちょっとクセのあるゴシックが、
時代的にも新鮮だったのかも知れない。


例を挙げると、例えばこの頃の雑誌『STUDIO VOICE』の見出し。
やはりこの頃の雑誌『SWITCH』は、モリサワの見出し明朝を使っていた。


音楽では、矢野顕子『LOVE LIFE』。
1991年のこの作品の歌詞カードの書体、これがモリサワのはず。
MB101でなく見出しゴシックMB31かな?
ちなみに、このアルバムのアート・ディレクターは立花ハジメ氏。
立花氏はこの年のADC(アート・ディレクターズ・クラブ)賞
グランプリを受賞されました。


音楽や映像が、ある時代へ誘うことはよくあることだ。
書体、文字のかたちそのものにも、イメージ想起力とでも呼ぶべき
そんな力があるのだと思う。