ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

浜口茂外也氏とGRACES

tinpan19732006-09-27

皆さん大絶賛の細野晴臣氏の
DVDでも大活躍されている
パーカッション・浜口茂外也氏。


作曲家・浜口庫之助氏のご子息にして、
70年代ティン・パン・アレー周辺音楽家
レコーディング&ライヴで数々の名演を聴かせ、
1986年、雪の代官山で細野さんが
転んで骨折されたときに通りがかって
救出なさった人物としても名高い存在。


2000年のTin Panライヴでもいい味を出されていたが、
何といっても私にとって忘れることができないのが、
1996年渋谷公会堂での吉田美奈子ライヴ。
アルバム『KEY』発売直後で、当然新作からの楽曲が多く、
本編最後に先行シングルとしても発売された「GRACES」を演奏。


この「GRACES」、美奈子さんの全曲中でもベスト3に入るくらい好きな曲だ。
ワシントンGO GOビートに、メジャー7th等を多用した(と思われる)
ロディアスな曲調(美奈子さんの曲としては希少)、
ひとつの音に多くの言葉を乗せていく手法。
その言葉の中には「七つの海を渡る風」というフレーズが登場したり、
風に木々がざわめく様子を「翼を持つ女神たちの歌が聴こえる」と表現したり、
「昨日よりも今日」「今日よりも明日」を愛していると歌い、
バッキング・メンバーや岩崎宏美さんたちのクワイヤーのようなコーラスが被さり、
“現代の賛美歌”とでも呼ぶべき崇高さ・気高さを備えている。


今、気になって検索したところ、「GRACES」シングル発売日は、
今から10年前1996年の9月21日。私の元旦(9/21の書き込み参照)であり、
1stアルバム『扉の冬』の23年後に世の中に出た曲。名曲であるわけだ。


アンコール前、クライマックスに満を持して演奏された「GRACES」。
浜口茂外也氏のパーカッションが最高にカッコよく会場に響き渡った。
思わず、天を見上げた。


吉田美奈子さん、このライヴを最後に、ホールでのコンサートを行っていない。
照明の打合せやら何やら純粋な音楽以外の部分に時間を割かれてしまうので
活動の場をライヴハウスに移す云々の発言をその後なさっていた。
その気持ちはファンとして理解できるし、もっともだと思う。


しかし、このときは、天井が高い会場で本当に良かった。
バンドの演奏が、茂外也氏のパーカッションの音が、空間に充満した。
教会までは行かなくても、ある程度の天井の高さがないと、
この崇高さ・気高さを受け止めきれないと思った。


美奈子さんは、あまりフェイクすることなくCDのトラックに近いかたちで、
この曲を歌い上げた。それが、とても心地良かった。
ぜひ、また、できれば茂外也氏のパーカッションの音と
原曲に忠実な美奈子さんのヴォーカルでこの曲を聴いてみたいものだ。


秋分から立冬までの晴れ渡った空の高い日、
この曲を聴くと心地良さが増す。思わず自然に感謝、したくなる。