ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

夏の名曲の共通項。

tinpan19732006-08-21

夏は、人を、少年少女にする(気がする)。


梅雨に入るか入らないかくらいからの
グルーミーな天気は、私を二十歳前後の
学生時代にタイムスリップさせる。
あの頃は、毎日がグルーミーで、曇り空で、
気持ちがカラッとしていなかったからだ。きっと。
今年は5月から例年以上に雨や曇りが多く、
そんな話をたくさん記して来たように思う。


夏の、真夏の、太陽と、入道雲と、熱い空気と、
蝉の声や、むせ返るような草の匂いは、私たちを
もっとイノセントだった日々へ誘ってくれる。


はつぴぃえんど(はっぴいえんど)「夏なんです」が名曲と云われるのは、
地べたに座り込んでビー玉に興じる少年のことを、
歌詩の冒頭部分で歌っていることが実は理由として大きいのではないか?


暑かった。でも関係なかった。
クワガタを探しに行ったり、泳いだり、我を忘れて、遊んだ。
時間はたっぷりあった。
親の目と、学校の宿題がちょっと気になったけれど、
好きなことを好きなだけ、好奇心の赴くままに楽しんだ。
永遠につづくと思った、あの夏。


あの頃の自分が、今の自分を見たら、どう思うのだろう?


小泉今日子の「夏のタイムマシーン」という曲は、
こんなシチュエーションを歌ったはず。
たしか秋元康さん作詩で、1988年のシングルだった。


私は社会に出て二年目くらいでとにかく忙しく、
この曲のスバラシさに実はあまり浸る余裕がなかった。


先日、コピーライターの友人たちとカラオケに行ったとき、
(いつもカラオケのことばかり書いている気がして
 ちょっと情けないが、四十歳を過ぎた人間が、
 第三者と音楽をわかち合える機会は実はそれほど多くない。
 中学・高校時代は、音楽を聴いたり、音楽について話すために、
 友人の家を行き来したりできた。
 大学時代は、それにクルマの中という空間が加わった)
この「夏のタイムマシーン」が名曲だという話になり、
じゃあ歌おうと曲をセットしたところ見事に誰も歌えなかった。


少女だった私に、今の私も一生懸命がんばっているから
と伝えてほしい。そんな歌だったと思う。タイム・カプセルとは逆の発想だ。


僕は何を伝えるだろう? あの頃の自分に。
「変わってないよ」と伝えようか。「変わったこと」といっしょに。