ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

1990年の午睡ミュージック&9.21。

tinpan19732006-08-16

1990年の夏はよくプールに行った。
27歳、アルバイトをしながら
コピーライター養成講座に通う日々。


順調に梅雨が明け、順調に暑かった。
順調じゃない境遇の僕は、自宅と
横浜のバイト先の近くの小中学校の、
一般に開放されているプールを調べ、
空いている時間にせっせと通った。


プールでは、広告の本をよく読んだ。養成講座の宿題を考えたりした。
他には、アーウィン・ショー「夏服を着た女たち」「夏の日の声」などは、
たしかこの頃に読んだはず。照りつける陽ざしにいたたまれなくなると、
プールに入りひとしきり泳いだ。


プールで、本を読む。ウォークマンで好きな音楽を聴きながら。
自宅で冷房機器を使うより
地球にやさしい(この頃からよく使われ出したフレーズ)し、
茶店にいるより経済的だし、図書館にいるより健康的だった。


この夏、よく聴いた音楽が坂本龍一『BEAUTY』だった。
ヴァージンと契約し89年末世界発売、
アート・リンゼイ、ユッスー・ン・ドゥール、オキナワチャンズら
多彩なゲストを迎えた、多様な音楽。


一曲一曲がヴァラエティに富んでいた。
一方でアルバムの曲順がしっかり計算されている気がして、
一曲目から順番に聴くのが好きだった。


ひと泳ぎして聴くと、3曲目「安里屋ユンタ」か
5曲目「アモーレ」で眠りに落ちてしまうことが多かった。
音楽を聴きながら半分眠って半分起きているような状態。
そのアンビバレンスが気持ち良かった。
子守唄がなぜ普及したかわかるような気がした。


安里屋ユンタ」は、細野晴臣氏の78年『はらいそ』のヴァージョンより、
教授のこのヴァージョンのほうが好きかも知れない。
(細野さんは感覚的に、教授は論理的に、曲に対峙している気がする)


「アモーレ」は、このアルバムのヴァージョンより、
前年サッポロ・ビールCMで使用されシングル化されたヴァージョンのほうが、
ラテンっぽくて夏っぽくて好きだったりする。
(このシングル・ヴァージョン、今CDで聴くことができるか
 どなたかご存知でしょうか?)


この1990年の夏の終わり、私はある方と知り合い、
9.21からコピーライターとして働き出すことになる。


1973年の夏の終わり、山下達郎氏が大瀧詠一氏と出会い、
9.21文京公会堂のステージに立った。
という事実に、ちょっと自分を重ね合わせてみたりした。