ティン・パン・アレーのSIDEWAYS

季節が流れていく。音楽が聴こえてくる。

風物詩の原風景。

tinpan19732006-08-04

太平洋高気圧が、太陽が、
がんばって、ようやく
夏らしくなってきた。


「五月雨」が新暦の季語に
なってしまったかのように、
五月の中旬から雨が続いて、
先走って停滞していた季節も、
再び順調に歩み出したようだ。


こうなると、「夏なんです」。
はつぴぃえんど(はっぴいえんど)の
この曲について記せる幸福に感謝しよう。


泣く子も黙る松本隆・作詩、細野晴臣・作曲。
問答無用の大名盤、1971年『風街ろまん』収録。


描かれる原風景は、松本氏が小学生のころ、
夏を過ごされた群馬県伊香保温泉界隈らしい。
祖父がこの辺りにお住まいで、
小学生のころ松本少年は、夏休みをよくこの地で過ごされたと、
『KAZEMACHI CAFE』の佐野史郎さんとの対談ページに記されている。


大正ロマン竹久夢二氏が愛した伊香保
風街ろまんの松本隆氏が、昭和30年代に入ったころ
夏を過ごされたのも何かの必然か。


この伊香保から山を下り、利根川を渡り、
その昔絹織物を多く産出した地に、昭和30年代の終わり、
僕は生まれ育った。これはただの偶然。


「鎮守の森はふかみどり 舞い降りてきた静けさが」
二番の歌詩の冒頭のこのフレーズがスバラシイと、
松本氏と僕のちょうど中間1956(昭和31)年生まれで、
僕より断然上手だった某コピーライター氏は言った。


「夏は通り雨と一緒に 連れ立って行ってしまう」
僕はこのフレーズが好きだ。
「日傘くるくる ぼくはたいくつ」
少年には退屈ささえ感じてしまう、
永遠に続くと思われた、あの夏。


戻ることはできないから、
浸る。毎年一度は聴く、僕の夏の儀式。
お盆に、ご先祖さまをお迎えするように。


今は2002年に出たトリビュート盤の
キリンジ・ヴァージョンを流している。
キリンジの「夏なんです」。
僕にとっての2006年の夏の象徴だ。